米5月雇用者数33.9万人の大幅増、失業率3.7%に悪化、時給伸びは鈍化
(米国)
ニューヨーク発
2023年06月05日
米国労働省が6月2日に発表した5月の非農業部門雇用者数は前月から33万9,000人増と、市場予想の19万人増を大きく上回った。就業者数が31万人減少し、失業者数が44万人増加した結果、失業率は0.3ポイント上昇し3.7%(市場予想は3.5%)だった(添付資料図参照)。
失業者のうち、一時解雇の失業者は前月から5万8,000人増の76万7,000人、恒常的失業者は14万3,000人増の158万8,000人だった。
労働参加率(注)については、生産年齢人口が前月から17万5,000人増の2億6,662万人、労働力人口が前月から13万人増の1億6,682万人となり、2023年3月から3カ月連続で62.6%だった。
平均時給は33.44ドル(前月:33.33ドル)で、前月比0.3%増(前月:0.4%増)、前年同月比4.3%増(前月:4.4%増)といずれも上昇した(添付資料表1参照)。
5月の雇用者数の前月差33万9,000人増の内訳をみると、民間部門は28万3,000人増で、うち財部門が2万6,000人増、その主な業種として、建設業は2万5,000人増、製造業は2,000人減だった。また、サービス部門は25万7,000人増で、教育・医療サービス業9万7,000人増、対事業所サービス業6万4,000人増、娯楽・接客業4万8,000人増など主要3業種が牽引した。運輸・倉庫業2万4,000人増、小売業1万2,000人増と、これらも堅調に増加した。政府部門も5万6,000人の大幅増だった。(添付資料表2参照)。
5月の人種別失業率は、白人3.3%(前月:3.1%)、アジア系2.9%(前月:2.8%)、ヒスパニック・ラテン系4.0%(前月:4.4%)、黒人5.6%(前月)4.7%)と、ヒスパニック・ラテン系以外で悪化した。
5月の雇用者数は、4月からわずかな減速が見込まれていたのに反し、大幅な雇用増となった。4月の雇用動態調査をみても、求人件数は1,010万件と2023年1月以来3カ月ぶりに1,000万件台となった。4月の失業者数565万7,000人なので、2022年12月から減少し続けてきた失業者1人当たりの求人件数は1.79件と4カ月ぶりに上昇に転じている。2022年3月のピークの約2件からは低下しているが、5月の雇用者増と合わせると、人手不足は依然として続いており、労働市場がタイトであることがうかがえる。
一方で、明るい材料も見られる。時給の伸びが前月比と前年同月比でいずれも鈍化した。これは、インフレ抑制の観点からは好ましい動きといえる。また今回、労働参加率は横ばいだったが、25~54歳の女性では77.6%と、統計でさかのぼれる1948年以降、最高を記録した。新型コロナ禍を理由に仕事を辞めた女性が、労働市場に戻ってきている可能性がある。労働参加が増えれば、労働需給逼迫の緩和、賃金上昇圧力およびインフレ圧力の緩和につながる。戻りが遅い、と指摘されるアーリーリタイア層と合わせ(2023年1月10日付地域・分析レポート参照)、労働参加率の動向には引き続き注目だ。
(注)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に占める労働力人口(就業者+失業者)の割合。
(宮野慶太)
(米国)
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