インド電気通信省、通信分野での国産半導体生産に向け提言

(インド)

アーメダバード発

2023年06月12日

インド政府・電子情報技術省(MeitY)は、インド国内における半導体製造エコシステムの構築を目指し、「電子産業(半導体、ディスプレイ)誘致・育成を図る包括的な政策プログラム」(2021年12月22日記事参照)を策定し、運用している。現行制度では、総額7,600億ルピー(約1兆2,920億円、1ルピー=約1.7円)の支援スキームにより、個別プロジェクト費用の50%に当たる財政支援を行うとしている。

これに関連し、電気通信省(DoT)が設置した産官学の有識者からなる作業部会は6月3日、通信分野において使用される半導体の国内設計および製造プロジェクトに対して、最大75%のインセンティブを与えるよう政府に提言した、と地元メディアが報じている(「フィナンシャル・タイムス」紙6月5日)。

DoTは、インド国内における通信分野用の半導体の大量生産に向けた関連方策を提案することを目的として、複数の作業部会で提言を取りまとめていた。

そのうちの通信用半導体の開発に関して議論した作業部会は、カスタマー構内設備(CPE、注1)に使用される3種類と、ネットワーク通信モジュールに使用される3種類の合計6種類の通信用半導体に焦点を当て、政府が通信分野に関連する半導体設計企業(ファブレス)を支援し、国内生産による付加価値を高めることに着手すべきとした。また、固定無線アクセス(FWA、注2)、ルーター、5G(第5世代移動通信システム)ネットワークなどの各分野に関しても、これらの国内市場規模の大きさに鑑みると国産の半導体で代替する必要があるため、国内の優良な相手先ブランド製造(OEM)企業を早急に特定し、国内での半導体生産を後押しすべきだとした。

その他、国家情報セキュリティーの観点から、通信関連の政府調達は信頼ある調達先からにすべきこと、通信事業者による国内製品の購入促進のインセンティブ導入、物流効率の向上に向けた港湾・空港での取り扱い時間短縮、物流倉庫業者への支援策、自由貿易倉庫地域の設立に向けた貿易政策の導入の必要性などについても提言が行われた。

(注1)Customer Premises Equipmentの略。ユーザーの構内にある通信設備を意味し、電話機、ブロードバンドルータ、ケーブルモデム、セットトップボックスなどを含む。

(注2)Fixed Wireless Accessの略。オフィスや一般世帯と電気通信事業者の交換局や中継系回線との間を直接接続して利用する無線通信規格の1つ。地域通信市場の競争促進、インターネットの利用拡大など大容量通信ニーズへの対応という点で展開が期待されている。

(古川毅彦)

(インド)

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