米サンフランシスコ市議会、ベイエリアの公共交通機関BARTへの救済措置を州に要請
(米国)
サンフランシスコ発
2023年06月09日
米国のサンフランシスコ市議会は5月30日、カリフォルニア州に対して、ベイエリア高速鉄道(BART、注1)へ資金提供を要請する決議案を承認した。複数の米国メディアが報道した。サンフランシスコの主要公共交通機関のBARTは、利用者減少によって数カ月前から急速に資金不足に陥り、4月下旬にギャビン・ニューサム知事(民主党)と立法府に対し、50億ドルの救済措置を予算に盛り込むよう要請していた。今回の市議会での承認はこれを後押ししたものだ。
BART利用者減少の要因は、リモートワークの定着に加え、安全性や清潔さに問題があるためと考えられる。ベイエリアの非営利経済団体ベイエリア・カウンシルが実施したインタビュー調査(注2)によると、電車内で安全だと感じると答えた人はわずか17%、交通システムが清潔だとした人はわずか16%だった。5月の平日の平均乗降客数は、新型コロナ禍前の2019年同月の約37%にとどまり、2月の約30%から大きな変化はみられていない(2023年4月20日記事参照)。
BARTは4月、温室効果ガス(GHG)削減、サービスの拡大・改善や利用者の増加、サービスやシステムの統合、安全向上を目的としたカリフォルニア州交通局が助成するプログラムに採択され、20億ドルの助成金を受けることが決定している。これに対し、BARTのジャニス・リー取締役会長は財務状況に関する声明の中で、「この救済措置は、BARTのような公共交通機関を現代化するための変革的な資本整備に不可欠だ」とする一方で、「このプログラムのような1回限りの助成では、2025年初めには資金が底をつく。今年度の州予算に救済措置が含まれなければ、BARTは2023年のできるだけ早期にサービスや従業員を大幅に削減し、サンフランシスコ国際空港向けの路線を含む平日・休日の運行本数と時間の縮小、一部の駅や路線全体の閉鎖などを検討し始めなければならない」と述べていた。
(注1)1972年の開通から50年にわたり、5郡(サンフランシスコ、サンマテオ、アラメダ、コントラコスタ、サンタクララ)にまたがる131マイル(約210キロメートル)の線路と50の駅を運営している。
(注2)2023年3月30日から4月9日にベイエリア周辺の約1,000人に対して実施。
(濱真奈)
(米国)
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