日本が「半導体・デジタル産業戦略」改定、アジア大洋州で資源調達強化

(日本、インドネシア、フィリピン、オーストラリア)

アジア大洋州課

2023年06月13日

日本の経済産業省は日本の半導体、高度情報通信インフラ、蓄電池などの産業に関して、今後の政策の方向性を定めた「半導体・デジタル産業戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」の改定を6月6日に取りまとめた。報告書は、新型コロナウイルス感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻を踏まえて、有志国が連携して、グローバルサプライチェーンを強靱(きょうじん)化し、必要な物資を調達できる環境を作り上げる重要性を指摘している。加えて、デジタル技術が進化する現在、その活用はエネルギー消費の増大にもつながり得る中、半導体や蓄電池をはじめとした技術の向上がその両立のカギを握る時代が到来したとしている。

脱炭素のカギを握る電気自動車(EV)に必要不可欠な蓄電池原材料の埋蔵、生産は特定国に偏在している。リチウムはオーストラリアが埋蔵と生産で、ニッケルはインドネシアが埋蔵、生産、精錬で、フィリピンは生産で、コバルトはオーストラリアとフィリピンが埋蔵、生産でそれぞれ存在感を示す。特に日本のニッケル輸入国はフィリピン、インドネシア、オーストラリアが上位を占める。

これら重要鉱物の確保について、中国の車載電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)や韓国の車載電池大手LGエナジー・ソリューション(LGES)に代表される中国、韓国の川下プレーヤーはインドネシアやオーストラリアなどでリスクもある鉱山権益への直接出資を通じて、日本企業よりも確実に、競争力あるかたちで、上流資源の囲い込みを図っている。報告書はこの点、2020 年代後半以降の資源確保に向けて、蓄電池業界全体の資源調達・確保のポートフォリオも考慮に入れつつ、川下プレーヤーも参画したかたちで、鉱山権益に出資などを実施できる官民連携体制の整備など、さらなる施策が必要と指摘している。

(新田浩之)

(日本、インドネシア、フィリピン、オーストラリア)

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