タイ輸出入銀とNEXI、在タイ日系企業の第三国展開を後押し

(タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、日本)

バンコク発

2023年06月08日

タイ輸出入銀行(EXIM)と日本貿易保険(NEXI)は67日、バンコク市内で在タイ日系企業向けセミナーを開催した。メコン地域の投資・ビジネス機会を念頭に、第三国事業投資や輸出取引への支援スキームを紹介した。タイでは、労働人口の縮小や産業の高度化などの課題から、タイ国外への事業展開が急務となっている。在タイ日系企業でも、タイ拠点をベースとした第三国展開ニーズが高まっており、EXIMNEXIが協力し、そうした動きをサポートする。

写真 バンコク市内で行われたEXIM・NEXI主催セミナー(ジェトロ撮影)

バンコク市内で行われたEXIM・NEXI主催セミナー(ジェトロ撮影)

EXIMのパスー・ロハチュン会長は「2022年の経済成長では、ベトナムが8.0%、カンボジアが5.0%、ラオスが2.3%と高い。非常に有望な市場」と強調した。同行のラック・ボラキットポガトーン総裁も「メコン地域は高成長に加え、人口規模も2億5,000万人に達する。高いパフォーマンスな労働力が豊富だ」とした。事業展開する上ではリスクも存在すると指摘した上で、「NEXIとEXIMが協力し、在タイ日系企業の第三国展開上のリスクを低減できる」と強調した。

NEXIの黒田篤郎社長は「この数年、企業を取り巻くリスクは高まる一方で、ジャスト・イン・タイムからジャスト・イン・ケースの時代になっている。しかし、外に出ざるを得ない状況」と言及。NEXIによる日本本社に対する輸出・投資・融資への保険のほか、2009年から開始された在タイ日系企業向けの、NEXI・EXIMによる再保険スキームの活用などを呼びかけた。一例として、中国電力と四国電力、タイの大手エンジニアリング会社TTCLがミャンマーのガス火力発電事業へ出資した際の再保険外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを紹介した。

ジェトロの黒田淳一郎バンコク事務所長は「近年、日系企業が周辺国に生産の一部を移管するなど、積極的な動きがみられる。タイが産業高度化をしていく上でウィンウィンの関係が構築できる。ジェトロもEXIM、NEXIと協力し、在タイ日系企業の輸出と投資、地域大でのサプライチェーンの強靭(きょうじん)化、エネルギーやスタートアップなど新分野での第三国展開を後押ししたい」と述べた。

日本とタイで連携し、カンボジア、ラオス、べトナム(CLV)にどう事業展開するかについてのパネル討論では、タイ投資委員会(BOI)のナリット・テートサティーラサック長官は「タイのみで生産するだけでなく、各国の資源に合わせ、サプライチェーンの分業を進めるのが重要だ。タイを基幹拠点とし、ある工程は周辺国で行い、タイで仕上げるなど、地域全体で生産するかたちが良い。タイは産業を高度化する必要があり、より複雑な工程や新産業に集中していくべきだ」と述べた。

タイ商務省国際貿易振興局(DITP)のアラダ・フアントン副局長は「タイ製品はCLV市場で信頼性が高い。タイ人とCLVの人々は肌質などが似ており、化粧品やベビーグッズ、マザーグッズなどは人気だ。物流網の拡充、電子商取引(EC)の隆盛も追い風となっている」と、タイからの輸出の優位性を紹介した。

(北見創)

(タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、日本)

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