リチウムイオン電池の国内需要、現在は主に輸入で賄う

(ドイツ)

ミュンヘン発

2023年06月13日

ドイツ電気・電子工業連盟(ZVEI)は6月1日、ドイツの電池の生産や輸出入などに関する統計を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同時に、エネルギー転換のために蓄電池が重要だとして、環境整備を訴えた。

2022年の国内の電池市場(注)は前年比62%増の163億4,000万ユーロに拡大した。うちリチウムイオン電池が92%増の116億3,000万ユーロで最大の割合だった。

2022年のリチウムイオン電池の国内生産額は前年比44%増の32億2,000万ユーロだった。輸出額は2%増の約50億ユーロ、輸入額は53%増の134億6,000万ユーロだった。ZVEIはここから、国内のリチウムイオン電池需要の多くは輸入で賄われたと分析した。

リチウムイオン電池の輸入元を地域別にみると、欧州が65億ユーロ、アジアが68億ユーロで、両地域がほとんどを占めた。欧州ではポーランド(39億ユーロ)、ハンガリー(14億ユーロ)、チェコ(5億6,000万ユーロ)からの輸入が多かった。アジアでは中国(56億ユーロ)、韓国(8億1,000万ユーロ)、日本(1億ユーロ)からの輸入が多かった。

ZVEIによると、輸入したリチウムイオン電池を蓄電池コンポーネントに組み立て加工して、再輸出するケースも多いという。リチウムイオン電池は電動工具や携帯電話などの機器、電気自動車(EV)などへの利用が多く、定置用蓄電池としての利用も増えているという。

ZVEI電池専門部会のクリスティアン・ローゼンクランツ部会長は、現在、蓄電池セルの最も重要な成長源はE-モビリティーだとし、「将来、欧州で生産されるEVに搭載する蓄電池がアジアや米国で生産されるとしたら、EVのバリューチェーンで欧州の貢献度は大きく低下するだろう」とした。そのため、欧州とドイツは、技術的主権を確保する必要があるとし、(1)投資助成などの産業育成の枠組み整備、(2)国際的に競争力のあるエネルギー価格、(3)安定したエネルギー供給、(4)十分なリサイクル能力が必要とした。

(注)ここでの電池市場は、生産額と輸入額の合計から輸出額を引いたもの。また、電池には一次電池と二次電池(蓄電池)の両方を含む。

(高塚一)

(ドイツ)

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