有価証券取引を通じた外貨の売買に新規制

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2023年05月19日

アルゼンチン中央銀行は4月20日、中銀通達A7746PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公布し、優良スワップ取引(CCL:コンタード・コン・リキダシオン)、電子決済市場取引(MEP)と呼ばれる有価証券の取引を通じて外貨を購入、売却する取引の規制を見直し、外国法(注)に準拠した有価証券の取引を行った場合に外国為替市場へアクセスするための条件を厳格化するとともに、パーキング期間(売買ができない期間)を延長した。

CCL取引は、有価証券の取引を通じてペソと外貨を、国境をまたいで交換する取引を指す。アルゼンチン国内にペソ、ドルの銀行口座、証券口座、米国に証券口座を持てば、証券取引を通じて手元のペソをドルに替えて海外の口座に送ることができ、その逆の取引も可能となっている。手元のペソをドルに替える場合、アルゼンチン国内でアルゼンチン国債(AL30やGD30)をペソで購入し、証券を米国の証券口座に移して米国で売却することによりドルを米国の証券口座で入手する。CCL取引では実際にドルが国境をまたいで移動するわけではなく、証券会社が顧客から預かっているお金がそれぞれの国の中で循環しているだけだ。MEP取引は、アルゼンチン国内での有価証券の取引を通じてペソと外貨を交換する取引を指す。

これまで、CCL、MEP取引を行う前後90暦日の間は外国為替市場で外貨を売買すること、つまり、公式為替レートで外貨を売買することが禁じられていたが、中銀は今回、外国法に準拠した有価証券の売買によってCCL、MEP取引を行った場合、前後180暦日の間、外国為替市場にアクセスすることを禁じた。国内法準拠の有価証券は従来どおりとなっている。

また、証券取引委員会(CNV)は4月11日、CNV一般規則957/2023外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、CCL取引により有価証券を購入してから売却するまでの間のパーキング期間を変更した。パーキング期間の間は国債価格の変動リスクが生じる。これまではペソ建てで購入してドル建てで売却する場合は2日間、その逆の場合はパーキング期間はなしとなっていたが、ペソ建てで購入してドル建てで売却する場合、国内法に準拠した有価証券の取引であればパーキング期間を24時間に短縮、外国法準拠の場合は36時間に延長した。債券市場における国内法準拠のアルゼンチン国債の取引活性化が狙いとみられる。

(注)第三国の法律に準拠するもの。外国法に準拠した有価証券は、第三国の法律を準拠法とする国債で、債務不履行が発生すると外国の裁判所が介入する。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

ビジネス短信 ef45240edc39da53