政府、北部洪水被害へ20億ユーロ以上の財政支援
(イタリア)
ミラノ発
2023年05月31日
イタリア政府は5月23日、北部のエミリア・ロマーニャ州などを5月15日を中心に襲った集中豪雨による洪水などの被害にあった市民や企業に対して、20億ユーロ以上の財政支援を行うことを閣議決定した。
この豪雨で、同州を中心に洪水や地滑りの被害に見舞われ、5月24日時点で15人が死亡、2万3,000人以上が避難する事態となった(5月24日エミリア・ロマーニャ州プレスリリース、5月25日ANSA通信)。
同地では5月1~3日にも豪雨があり、一部地域で非常事態の警報が出ていた。
ジョルジャ・メローニ首相はG7広島サミットに参加中だったが、5月20日に予定を切り上げて帰国し、その足で被災地を訪問。エミリア・ロマーニャ州のステファノ・ボナッチーニ知事との会談後、被害状況を把握した上で、被災した企業や市民に対する免税措置や補償に関する手続きの簡素化の必要性などを述べた(5月21日「コリエーレ・デラ・セーラ」紙)。
23日に閣議決定した被災者向け支援の主な内容は次のとおり。
- 企業や個人事業主を対象に、5月1日から8月31日までの税金、社会保障費の支払い義務の一時停止、ガス・電気料金の支払いを一時停止とする。
- 農業を含む全ての生産部門の企業に対し、最大90日間、給与保証付きでの従業員の一時解雇を可能とする(5億8,000万ユーロを計上)。
- 国外展開を目指す企業を支援する政府関連機関SIMESTから、輸出企業向けに返済不要の補助金を交付(3億ユーロ計上)。
- 休業を余儀なくされた自営業者向けに最大3,000 ユーロの一時金を交付(2億9,800万ユーロ計上)。
- 中小企業向けの信用保証基金による助成を強化し、同基金が最大100%まで信用保証することを可能とする(1億1,000万ユーロ計上)。
エミリア・ロマーニャ州のイレーネ・プリオーロ副知事は、今回の災害による被害総額は現時点では正確にはわからないが、70億ユーロ以上になると試算。同副知事は、多くのインフラが損害を受けていることや、過去にみない土砂崩れが起きていることもあり、被害額はさらに跳ね上がるだろうと予想している(5月24日「ラ・レプブリカ」紙)。
政府の対応以外にも、イタリア産業同盟が労働組合と共同で基金を創設。イタリア大手銀行のインテーザ・サンパウロは、災害直後の5月19日に救済策として20億ユーロを計上。返済不要の補助金500万ユーロを緊急支援活動に割り当てるなど民間の支援も進んでいる。
エミリア・ロマーニャ州は農業や食品、自動車、機械、陶器といったイタリアの代表的な産業が集積し、重要な経済活動の一端を担っている。そのため、同州の被害状況が今後さらに正確に把握され、適切な支援が実行されることが望まれる。
(平川容子)
(イタリア)
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