回復軌道に乗る欧州工作機械業界など、EU鉄鋼セーフガード撤廃を要請

(EU、スイス、トルコ、英国)

ブリュッセル発

2023年05月12日

欧州工作機械工業連盟(CECIMO)は5月9日、トルコのアンタルヤで年次総会を開き、2022年の欧州の工作機械・工具の生産額は前年比11.9%増の約250億ユーロ、需要は23.4%増の約184億ユーロだったと発表した。受注数が高水準を維持し、稼働率は新型コロナウイルス危機前の2019年を上回ったとして業界の回復を強調した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

貿易面では、輸出額が前年比11.7%増、輸入額が28.8%増だった。輸出先は米国と中国、輸入先は日本・中国・台湾が大きな割合を占めた。2023年の生産額は、前年の受注残や、欧州域内での受注増を見込み、前年比約8%増と予測した。

鉄鋼ユーザー業界団体、EU鉄鋼セーフガード措置の早期撤廃を求める

好調な業績を受けて、鉄鋼ユーザー業界はセーフガード措置を受ける鉄鋼業界への不満を強めている。CECIMOや欧州自動車工業会(ACEA)など鉄鋼ユーザー業界7団体は5月9日付で、欧州委員会に対し鉄鋼セーフガード措置の早期撤廃を要請する共同声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

この措置は、鉄鋼製品26品目について関税割当枠(クオータ)を設定し、割当枠を超過すると25%の関税を課すというもの。2019年に正式発動され、現在、期限を2024年6月末に延長して実施されているが(2021年7月5日記事参照)、欧州委は2022年末に、終了期限を1年早める検討を進めることを公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしていた。

共同声明では、近年、鉄鋼価格が大幅に変動し、サプライチェーンに混乱が起きたと指摘。2023年10月1日から段階的に実施される炭素国境調整メカニズム(CBAM、2022年12月14日記事参照)にも言及し、EU域外国・地域との厳しい競争が続くとして、ユーザー業界は域内外を問わず柔軟に調達できる必要があると訴えた。

セーフガード措置の問題点として、(1)一部の国や製品カテゴリーについて個別の割当枠が少ないものが複数あり、割当枠が即時に埋まるため関税が課せられる、(2)EUのグリーン化に必要な鉄鋼製品を中心に、域内生産だけでは主要製品の需要に対応できず、発表された投資計画は将来的な需要を満たす規模ではない、(3)割当制による輸入関連手続きは煩雑で、特に中小企業にとって負担となっている点を挙げた。声明は、6月30日までにセーフガード措置を撤廃すべきだと求めている。

(滝澤祥子)

(EU、スイス、トルコ、英国)

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