イラン車がロシアに到着、まもなく販売開始

(ロシア、イラン)

欧州課

2023年05月10日

ロシアでまもなく、イラン製乗用車の販売が始まる。ロシアの自動車ディーラー大手ロルフは4月半ば、イラン最大の自動車メーカー「イラン・ホドロ(以下、IKCO)」の公式パートナーになったことを発表した。同社はIKCOのセダン「タラ」の販売を5月15日に開始する(自動車市場調査会社「アフトスタト」4月27日)。既に30台をロシアに輸入し、追加の60台の到着を待っている状況という。IKCOは今後、タラに加え、同じくセダンのデナやソレンもロシア市場に追加投入することを検討している(「オートニュース」4月26日)。

IKCOに次ぐイラン2位の自動車メーカーのサイパも、セダン「サイナ」やハッチバックタイプのクイックなどを6月1日から販売する計画。サイパの輸入販売を行う地場自動車ディーラーのベストモーターズによれば、2023年にロシア全土に120のディーラーセンターを開設し、1万台以上の販売を目指す。さらに同社は、サンクトペテルブルクでの現地生産の可能性について、現在サイパと協議中としている(タス通信3月27日)。

低価格への期待の一方でシビアなコメントも

IKCOは、2000年代にセダン「サマンド」をロシアで販売していたが、ルノーの低価格車ロガンなどとの競争に勝てず、2009年に販売を停止していた。今回は2度目の挑戦となる。

イラン車に対する最大の期待は価格の安さだ。タラの販売価格は152万9,000ルーブル(約245万円、1ルーブル=約1.6円)となる(「オートニュース」4月26日)。主流の中国車の価格を下回り、ロシアで最も安価な外国車となる。また、「ウクライナ情勢を受けて市場に慢性的に新車が不足する中、イラン車の市場参入は消費者の選択肢を増やし、インドなど他国の自動車メーカーをロシアに引きつけるきっかけとなり得る」として、イラン車が国内の自動車市場にとって好ましいとの声が聞かれる(「ロシア新聞」4月27日)。

一方で、全体を見渡すと、専門家からは厳しいコメントが目立つ。自動車関連のラジオ番組のディレクターなどを務めるイーゴリ・モルジャレット氏は「イラン車は、同じ低価格セグメントのリーダー的存在である起亜やフォルクスワーゲンなどと比べて技術やデザインの面で大きく劣っている」と話す。同時に「サイパに見込みがあるとすれば、それはロシア国内で組み立て生産を行う場合のみだ」とし、欠点を補うためにはさらなる価格の引き下げが必要だとしている。

このほか、自動車ディーラー、ペトロフスキーのマーケティング部長を務めるセルゲイ・ノボセリスキー氏も「イラン車の知名度が低い中、ロシアで販売されるモデルが3、4種に限られ、販促費をロシア側のディーラーが負担するようでは成功は見込めない」と、マーケティング手法を工夫する必要性を説いている(「アフトスタト」4月3日)。

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