新しい移民規制によりメキシコ国境の不法入国者数はほぼ半数に低下

(米国、メキシコ)

米州課

2023年05月22日

米国では、5月11日に、トランプ政権時に導入された国境措置「タイトル42」が撤廃された。それ以後、米国の国土安全保障省(DHS)と司法省が5月10日に発表した不法移民向けの新しい規則が施行された(2023年5月11日記事参照)。これにより、メキシコ国境で不法移民の増加が予想されたが、各種メディアによれば、タイトル42の撤廃直前から、不法移民はほぼ半数に低下したという。

CBSニュースは5月17日、米国南部国境の不法入国者数について、政府高官が10日に「タイトル42の期限切れ前の5月第1週に1日平均1万人に急増したのをピークに、その後は1日平均4,400人に減少した」と語った、と報じている。不法入国者数が急激に減少した背景には、強制送還の増加、規則の強化、米国に向かう移民を阻止する他国の取り組みがあったとしている。

他方、フォックス4は5月15日、移民捜査官はタイトル42が撤廃される前、米国南部国境で1日当たり約1万人の移民と遭遇していたが、撤廃された12日以降は、1日当たり約5,000人まで減少したと報じている。

新たな規則は不法入国者に対して、最低5年間の再入国禁止や刑事訴追の可能性などを定めている。アレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官をはじめとするバイデン政権の高官は、連邦政府は不法に米国とメキシコの国境を越えた者を罰する、と繰り返し述べている。また、マヨルカス長官は「密輸業者のうそを信じるな」と注意を促している(「ロサンゼルス・タイムス」紙電子版5月18日)。

さらに、テキサス州のグレッグ・アボット知事(共和党)は5月19日の講演で、同州の国境を越えた者に罰則を科す法案の成立を目指すなど、国境警備の強化に向けたいくつかの取り組みを行っていると明らかにした(「KENS5」5月19日)。

ハーバード大学アメリカ政治研究センターとハリス・インサイト・アンド・アナリティクスが5月19日に発表した世論調査PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(注)によれば、「タイトル42が撤廃されて以降、不法入国はどれくらい発生していると思うか」に対する回答として、「1,000~5,000人」が31%、「5,000~1万人」が26%、「1万5,000人超」が16%、「1,000人以下」が14%だった。米国民がおおむね、メディアで報じられている数字と近しい認識を持っていることが分かる。

(注)実施時期は2023年月5月17~18日。対象者は全米の登録有権者2,004人。

(松岡智恵子)

(米国、メキシコ)

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