強豪サッカークラブ、パルメイラスが本拠地スタジアムへの入場に顔認証システムを導入

(ブラジル)

サンパウロ発

2023年05月17日

ブラジルのサッカークラブチーム、パルメイラスは5月11日、5月10日に行われた1部リーグ(カンピオナート・ブラジレイロ・セリエA)の試合で、観客がパルメイラス本拠地スタジアムに入場する際に顔認証システムを本格稼働したと報告した。5月10日と次の13日のホーム開催試合で迅速な入場が行われ、顔認証システム導入はおおむね順調な滑り出しをみせた。

パルメイラスのレリア・ペレイラ会長は「入場券の不正販売(いわゆるダフ屋行為)への対策は自身が会長として責任を持っていたものであり、努力が価値を生みつつあることを大変誇りに思う。(本拠地である)アリアンツ・パルケに顔認証システムを導入することで、ブラジルのさまざまなサッカークラブチームやエンターテインメント業界に影響を及ぼす重大な問題への解決策を見いだした。われわれの最大の財産であるサポーターを守ることが目的だ」と説明した。

パルメイラスは1月から、一部の試合において観客を対象とした顔認証システムの試験的導入を開始していた。また、1部リーグのゴイアスE.C.も、1月17日付公式発表で顔認証システムによる入場が既に可能になっていると発表していた。

パルメイラスが本格的な顔認証システム導入に向けて動いていた1月時点では、メリットとデメリットを比較する報道もみられた。例えば、1月17日付の現地紙「グローボ」は、チケットレスで迅速な入場が可能になることや不正販売を防ぐこと、またパルメイラスの顧客データの質を向上させることで新たなマーケティングの可能性が広がることを利点としている一方、個人の顔という機密性の高いデータが悪用されるリスクや一部のサポーターは顔認証が入場チケット購入のための条件となることに抵抗があり、摩擦を生む可能性もあると述べていた。

パルメイラス本拠地スタジアムの顔認証システム(5月13日時点)の仕組みをみると、試合チケット購入時に顔認証登録が求められ、スマートフォンのカメラを起動して登録が完了する。試合当日は、入場ゲートを通過する際に顔認証機能が動作して約1秒で認証が完了した。

パルメイラス本拠地スタジアムの顔認証システムは、ビーパス(bepass)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますというブラジル企業の技術が使われている。同社公式サイトによれば、同社は2022年創業。イベントや展示会、病院などさまざまな入場時に利用可能な独自技術を開発している。個人情報はLGPD(ブラジル個人情報保護法)に加えて、EU一般データ保護規則(GDPR)を順守しているとしている。ビーパスの技術は、顔の80カ所から個人を識別する方法により約2秒で認証・ゲート通過が可能となっていると説明している。

個人情報保護をクリアした顔認証システム利用が、今後も他のクラブチームやイベントにおける入場での広がるかどうかに注目が集まる。

(古木勇生)

(ブラジル)

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