ロシア、ジョージア国民への短期滞在ビザを廃止、2国間の直行便を再開へ

(ロシア、ジョージア)

欧州課

2023年05月23日

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は5月10日、2つの大統領令に署名し、2000年から続いていたジョージア国民に対する短期滞在ビザ制度と、2019年7月に導入した両国間の直行航空便の禁止措置を撤廃した(大統領令第335号、第336号)。これにより、5月15日以降、ジョージア国民は、就労や長期留学目的で渡航する者と90日以上の長期滞在者を除き、180日の期間内で最大90日まではパスポートのみでロシアへの入国が可能になった。モスクワ~トビリシ間の直行便も5月末までには再開される見込みだ。

ロシア外務省は、制限措置の緩和は両国民の交流を促進するための原則的なアプローチによるものだと説明している。しかし、複数の政府高官や国会議員の発言から、ウクライナ紛争による西側の対ロ制裁にジョージアが参加していないことに対するロシア政府の評価の表れとする見方がある(「コメルサント」5月10日、「BBC」5月10日)。

ジョージアのサロメ・ズラビシビリ大統領はこの決定を受け、ロシアによる挑発だと反発し、国家安全保障会議に対してロシア国民への3カ月ビザ導入を検討するよう求めた。現在、ロシア国民はジョージアにビザなしで最長1年まで滞在することができる。一方、イリヤ・ダルチアシビリ外相は、ロシアに在住する100万人以上のジョージア国民のために、ロシア政府の決定を人道的観点から歓迎するとコメントした(「Agenda.ge」5月10日)。

野党側は、ロシアはこのような施策でジョージア国民の懐柔を図っている、制裁逃れという非難を受けているジョージアをさらに複雑な立場に立たせようとしており、EU加盟候補国の地位獲得との関連で好ましくないなどと批判している(「BBC」5月10日)。

ロシア運輸省は、ロシアの航空会社が国産の航空機でモスクワ~トビリシ間の直行便を週7便運航すると発表し、ロシア外務省はロシア国民へのジョージア渡航自粛勧告を撤回した。運輸省によると、航空各社は直行便再開に向けて機体確保などの準備を開始している(「BBC」5月10日)。

一方、ジョージア経済省は、制裁対象となっていないロシアの航空会社に対してなら、旅客輸送の許可を出す用意があるとしている(「Agenda.ge」5月15日)。ジョージア航空は5月20日からのトビリシ~モスクワ直行便の航空券の販売をオンラインで開始した。両国の観光業界では、ロシア人によるジョージアツアーへの需要回復を期待している。ジョージア政府観光協会の報告によると、2018年には140万人のロシア人が同国を訪れ、外国人観光客全体の20%を占めていた(「コメルサント」5月10日)。

(小林圭子)

(ロシア、ジョージア)

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