輸入代金の人民元決済を開始

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2023年05月18日

アルゼンチン経済省は4月26日、アルゼンチンと中国両国の中央銀行が締結した通貨スワップ協定を発動し、輸入代金のドル決済を中止して、人民元決済に切り替えると発表した。法令上、人民元決済の対象に制限はないが、当面は中国原産品を優先するとしている。なお、今回の措置は通貨スワップ協定を利用して外貨準備を節約するための一時的なものとみられる。

アルゼンチン中央銀行(BCRA)と中国人民銀行(中央銀行)は2009年に最初の通貨スワップ協定を締結し、その後、更新や内容の見直しを数度行っている。2023年1月8日のBCRAの発表によると、現在、外貨準備強化に向け、1,300億元(約187億ドル)、外国為替取引向けに350億元(約50億ドル)が設定されている。

なお、輸入代金の人民元での決済については、規定がほとんど明文化されていないため、5月10日にBCRAが説明会を開催した。それによると、アルゼンチンの輸入者は、アルゼンチン共和国輸入システム(SIRA)で輸入申告を行い、輸入許可が出ると、取引銀行を通じて人民元の送金手続きを行う。BCRAは輸入者の取引銀行に対してスポットと先物の両方で人民元とアルゼンチン・ペソの交換に応じ、その際に適用するペソと人民元の交換レートは、ドルとペソ、ドルと人民元の交換レートから算出する。輸入者の取引銀行は、コルレス銀行または人民元クリアリング銀行を介して、輸出者の取引銀行に人民元を送金する。アルゼンチンの人民元クリアリング銀行は、中国工商銀行(ICBC)となっている。また、前払い、一覧払いが認められる条件は、人民元決済でもドル決済でも同じだ。

5月11日付の現地紙「エル・クロニスタ」(電子版)は説明会の内容を伝えている。それによると、人民元決済の対象となる輸入は、外国為替と税関の規則上は原産地の規定はなく、取引相手や商品の原産地が中国という必要はないとしている。しかし、通関業者センター(CDA)は5月3日、対象となる輸入について商業庁に確認した結果を発表しており、当初の適用対象は中国原産品としているほか、同紙も「中国原産品を優先する」との商業庁のコメントを紹介している。インボイスが人民元建てである必要はなく、インボイスがドル建てでも、通関情報処理システム上で手続きをすれば、人民元での決済は可能としている。

SIRAで承認される輸入代金の支払い時期は、人民元決済の場合は現在の目安となっている通関後180暦日から90暦日程度に短縮されるとも報じられているため、中国原産品の輸入に人民元決済が使われる機会は増えそうだ。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

ビジネス短信 b8562b9a8a84c5f8