米シカゴ市が緊急事態宣言を発令、亡命希望者の大量流入受け
(米国)
シカゴ発
2023年05月12日
米国シカゴ市のローリ・ライトフット市長(民主党)は5月9日、亡命希望者の急増や、テキサス州から新たに亡命希望者を乗せたバスが到着したことを受け、緊急事態宣言を発令した。シカゴ市によると、同市に到着した亡命希望者の多くがベネズエラ出身だが、アフリカ、欧州、中東など世界各地からも集まっている。同市は2022年8月以降、すでにテキサス州から8,000人以上を受け入れていることに加えて、テキサス州が同市への調整や連絡なしに移送をしていることもあり、宿泊施設の準備などが追いついていないという。移送されてきた移民は現在、警察署などへ一時的に緊急避難している状態だ。
テキサス州のグレッグ・アボット知事(共和党)は、南部の国境から入国した亡命希望者を米国のサンクチュアリ・シティ(注1)であるシカゴ市、首都ワシントンやニューヨーク市などにバスなどで移送する措置を2022年8月から開始している(注2)。アボット知事は2023年5月2日、「自らを『サンクチュアリ・シティ』と宣言した都市への移民のバス輸送は、不法移民であふれかえった国境地帯に必要な救済措置となっている」と述べている。
シカゴ市は、今後さらにテキサス州からの移民流入がさらに増加するとみており、引き続き連邦政府と州政府に対し、資金の拠出や州兵の出動要請などをしている。テキサス州南部の国境周辺では、トランプ前政権が新型コロナウイルス感染拡大防止を理由に導入した国境管理措置「タイトル42」(2023年5月11日記事参照)の失効を前に、「前例のない数の亡命希望者が流入する可能性がある」とされている(NPR5月11日)。同措置は、移民の入国を厳しく制限し、亡命希望者の即時の強制送還なども定めていた。なお、バイデン政権は「タイトル42」の失効に伴い、新たな規則を公表している(2023年5月12日記事参照)。
(注1)市政府が個人の移民状況を尋ねたり、その情報を当局に開示したりしない、また個人の移民状況に基づいて市のサービスを拒否したりしない自治体。米国移民関税執行局(Immigration Customs Enforcement)とは連携しない。
(注2)テキサス州政府が不法移民の増加に対応するため、国境の安全確保の措置として2021年3月に開始した「ローン・スター作戦」の一環。アボット知事は、移民政策の厳格化を訴えており、2022年9月にはカマラ・ハリス副大統領の公邸近くにバスで100人以上の中南米からの移民を移送した。
(星野香織)
(米国)
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