財務省、ガリポロ筆頭次官を中銀金融政策担当理事に指名へ
(ブラジル)
サンパウロ発
2023年05月11日
ブラジル財務省は5月8日、中央銀行の役員人事のうち、金融政策を担当する役員に、財務省筆頭次官のガブリエル・ガリポロ氏を指名する意向があると公式発表した(注1)。政府が中銀との距離を縮めることを念頭に置いているとみられる。
中銀の金融政策担当役員は、2023年2月28日に前任者が任期を迎えていたものの、後任が未決定の状態となっていた。中銀は約45日ごとに金融政策委員会(Copom)を開催し、政策金利などの金融政策をつかさどる役割がある。中銀の役員9人(総裁を含む)はその決定に関わっている。
直近では5月2、3日にCopomが開催され、政策金利はインフレ対策などを考慮して、13.75%で据え置かれている。5月5日付の中銀週次レポート「フォーカス」によると、ブラジルの代表的なインフレ指標である拡大消費者物価指数(IPCA)は2023年が6.02%、2024年が4.16%と見込まれている中、2023年末の政策金利予測値は12.5%となっている。ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は繰り返し、高金利を維持する中銀の金融政策を批判している。
今回の金融政策担当役員はルーラ大統領就任1年目の人選で、任期は4年。8人の役員人事が交代するタイミングはそれぞれ異なり、ガリポロ氏の前任の金融政策担当役員と監査担当役員は2月28日に任期を迎えていた。12月31日には、他の2人(国際問題・企業リスク管理担当、対外関係・市民・行動監督担当)も任期を迎える。ルーラ政権1年目で8人の役員のうち半数の人事交代が可能になる。
5月8日付の現地紙「フォーリャ・デ・サンパウロ」によると、ブラジルの投資関連会社ベーダ・インベスチメントスのエコノミスト、ホドリゴ・マルカッティ氏はコメントとして、「ガリポロ氏が(金融政策で)技術的に精通しているとしても、市場の見方としては、政府が政策金利を引き下げるための動きと捉えるだろう。決定は技術的な要素よりも政治的な要素がある」と説明し(注2)、政府と中銀の対立を和らげる可能性についても触れている。
一方、アセットマネジメントを行うジェラル・アセットのチーフエコノミストのデニルソン・アレンカストロ氏は「中銀への政治的関与はないとみている。中銀総裁のロベルト・カンポス・ネト総裁は(金融政策で)十分に技術面を理解した人物で、これまでの中銀の動きに影響はないだろう」と、政府が中銀への関与を強める懸念を払拭するコメントを寄せている。
ガリポロ氏は2017年から2021年まで、官民連携(PPP)に関わることの多いブラジルのファトール銀行の総裁を歴任。ルーラ大統領を輩出した労働者党(PT)が反対する中、サンパウロ電力会社(CESP)、リオ州上下水道公社(Cedae)の民営化を推し進めた経験もある(5月8日付現地紙「フォーリャ・デ・サンパウロ」)。
(注1)ただし、上院での分析と承認プロセスを経る必要がある。
(注2)5月8日付の現地紙「グローボ」では、ガリポロ氏の指名が発表された後、現地通貨レアルの対ドルレートがやや下落した(1ドル当たり5レアル台となった)旨、報道された。
(古木勇生)
(ブラジル)
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