南ア政府、ロシアへの武器供与疑惑に見解を表明、経済界は貿易への影響を懸念

(南アフリカ共和国、ロシア)

ヨハネスブルク発

2023年05月18日

南アフリカ共和国のシリル・ラマポーザ大統領は5月11日、駐南ア米国大使がロシアへの武器供与疑惑を公の場で言及したことに対し、裏付けがない中でコメントしたことは遺憾であり、両国のパートナーシップ精神を損なうものだと表明した。さらに15日、同大統領はロシアによるウクライナ侵攻に対する政府の見解をあらためて発表。この対立は、対話と平和的手段によって解決されるべきだとし、政府のスタンスはロシアを優遇するものではないと強調した。

今回の疑惑は、5月11日、在南ア米国大使館のルーベン・ブリゲティ大使がアフリカ成長機会法(AGOA)(注)交渉に関するメディアインタビュー時に言及されたものだ。同大使は、2025年に期限を迎えるAGOAがその後更新されるかどうかは不明とし、その理由の1つはロシアとの関係があるとした。同大使によれば、2022年12月にロシアの貨物船「レディR」が南アの港に停泊した目的は武器の調達のためで、それらはロシアに運び込まれたという。さらに、南ア政府が2023年8月に南アで開催するBRICSサミットにプーチン大統領を招待していることなどを踏まえ、米国政府は南アの姿勢に懸念があるとコメントした。

ラマポーザ大統領は「レディR」が南アに停泊したことは認めているものの、渡航の目的については裏付けがないことから、今後、検証のための調査委員会を設置すると発表した。

ブリゲティ大使のコメントの後、南アフリカ・ランドは1ドル=19.52ランドまで下落。新型コロナウイルス感染拡大下で記録した2020年4月の19.35ランドを超える最安値を記録した。

南アの経済界も5月12日、南ア政府の政治的姿勢と今後のビジネスへの影響を懸念する声明を出した。南ア経済団体連合会(BUSA)は「今回の疑惑は、AGOAを通じた米国市場への継続的アクセスに悪影響を与える可能性が高い」とし、ビジネス・リーダーシップ・サウスアフリカ(BLSA)も「AGOAへの影響だけでなく、EUがロシアに関する枠組みを見直す際、EUと南アの貿易協定も影響を受ける可能性がある」と述べた。

(注)米国がサブサハラアフリカ諸国の発展に寄与すべく2000年に成立させた法律で、条件を満たす国からの輸入に対して無関税の特恵待遇を与えるもの。

(堀内千浪)

(南アフリカ共和国、ロシア)

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