輸入代金の新たな規制で前払いはより困難に

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2023年05月23日

アルゼンチン中央銀行は5月11日、中銀通達A7766PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公布し、通関前の輸入代金の支払いやクレジットカードによるギフトカードの購入などに新たな規制を導入した。

アルゼンチンでは現状、貨物を通関する前に輸入代金を支払うことは困難だが、一部の取引については例外的に通関前の支払いを認められている。通関前に輸入代金の送金が認められている例外的な取引は中銀通達A7622PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に規定されており、新型コロナウイルスの検査キット、政令333/2020号が規定する医療関連製品、医薬品、医療品原料、食品原料、石油または歴青鉱物油、石油ガスおよびその他のガス状炭化水素、発電所向けの歴青炭、公共インフラ向けの一部建材、メルコスール対外共通関税分類で資本財(BK)に指定されている品目などの輸入がそれに該当する。しかし今回、その例外規定の適用に新たな条件を付した。

通関前の支払いを行う場合、これまで輸入者は、例外規定に該当するとの宣誓供述書を取引銀行に提出するだけでよかったが、5月12日以降はアルゼンチン共和国輸入システム(SIRA)上の輸入申告が「SALIDA(承認)」、かつ支払日が「0日」の状態にならなければ通関前の支払いができなくなった。SIRAでは、輸入の承認とともに輸入代金の支払い可能日が提示される仕組みとなっている。

加えて、国内で発行されたクレジットカード、デビットカード、プリペイドカードを使って、海外の事業者が発行するギフトカード、例えばAmazonギフトカードなどを購入する際にも、中銀の事前承認が必要となった。ギフトカードが一般消費者による海外の財やサービスの利用を促し、外貨の流出につながるためとみられる。中銀の事前承認を取得するのは難しいため、ギフトカードをクレジットカードなどで購入するのは事実上、困難となった。

また、アルゼンチン中銀は、有価証券の売買を通じた外貨の取得に関連した規制を見直した。外国為替市場で外貨を売買する、すなわち、公式為替レートで外貨を売買する場合、自社を直接的に支配する自然人や法人のリストを提出する必要がある。これまでは、これら自社を直接的に支配する自然人や法人が、過去180暦日以内に優良スワップ取引(CCL取引)や電子決済市場取引(MEP取引)を行い、かつ、これらの自然人や法人が現地通貨建ての流動資産を受け取っていた場合、公式為替レートで外貨を売買することができなかった。今回の改正により、その対象が自社を直接的に支配する自然人や法人のみならず、自社と同じ企業グループに属する法人が含まれた。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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