中銀が経済危機以降の経済・金融動向を分析

(スリランカ)

コロンボ発

2023年05月10日

スリランカ中央銀行は4月27日、2022年度年次報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同報告書は、スリランカの2022年4月から2023年3月のマクロ経済動向を包括的に分析している。第1章で経済や物価、金融システムの全体像や経済見通し、政策動向について概括的に言及した上で、第2章以降で国内生産や支出、所得や雇用、物価や賃金を巡る変化、エネルギーや物流など社会基盤への影響、貿易など対外経済や財政・金融政策の動向、金融セクターの安定性など個別の論点を扱っている。

2022年度の経済に関して、財政赤字と国際収支の長年の赤字による持続不可能なマクロ経済モデルにより、独立後最も厳しい状況に直面し、国民の不安や政治的混乱を招いたとしている。その結果、2022年度の実質GDP成長率がマイナス7.8%を記録するとともに、消費者物価指数に基づく国全体のインフレ率は2022年9月に前年比73.7%を記録した。他方で、市場の誘導による為替レートの安定化、国内外通貨の流動性確保、輸入制限による外貨流出防止などの金融・財政政策を通じて、危機の悪化を防止するとともに、社会経済的な安定を回復させたことで、IMFからの金融支援につながったと評価している。

対外経済に関しては、海外からの資金流入が滞り、外貨準備が枯渇するとともに、自国通貨のスリランカ・ルピー安により国際収支が悪化したことで、さまざまな制限的な政策を取らざるを得なくなったと説明している。輸入制限などの措置を通じた輸入減少に伴い、貿易赤字は2021年度の81億3,900万ドルから、2022年度には51億8,500万ドルに減少し、経常収支全体の赤字額は2021年度の32億8,400万ドルから、2022年度は14億5,300万ドルに縮小した。

今後の経済の見通しについては、IMFによる金融支援プログラムで規定された構造改革の履行状況に依存するとしている。高金利による物価高騰抑制策や国際収支の制約により、経済回復には時間を要するとして、2023年度の実質GDP成長率をマイナス2.0%と見込んでいる。

(大井裕貴、ディロン・デワジ)

(スリランカ)

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