2023年の一次産品価格指数は急落、前年比2割減、世界銀行の見通し

(世界)

国際経済課

2023年05月01日

世界銀行は4月27日、「一次産品市場の見通し」〔プレスリリース(英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日本語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)〕を発表した。2023年の一次産品価格指数(2010年=100)は112.9で、前回予測値(2022年10月発表)から16.2ポイントの大幅な下方修正。前年(2022年)からは21.2%の下落となった。歴史的なピークを記録した2022年6月比では約3割下落し、世界銀行は「(新型コロナウイルスの)パンデミック発生以降、最も急激な下落」と評した。2024年は112.1と、安定的に推移する見通し(添付資料表参照)。

世界銀行は価格下落の背景について、世界経済の停滞や暖冬、ロシアとウクライナから輸出される主要産品の貿易相手先が変わったことによる単価の下落など、複数の要素が組み合わさった結果だと分析した。2023年のエネルギー価格指数は113.2、非エネルギー価格指数は112.5で、前年比でそれぞれ25.8%減、9.6%減だった。ともに前回発表から21.5ポイント、1.2ポイントの下方修正で、ピークからの下落傾向はより鮮明となった。ただし、全ての主要な一次産品群で2015~2019年までの平均を上回り、パンデミック前と比較すると、依然として高水準が続く。

エネルギー価格のうち、2023年の欧州の天然ガス価格は1mmbtu(100万英熱量単位)当たり19.0ドル(年間平均)で、予想を上回る暖冬だったことや省エネへの取り組みが奏功し、前年の平均価格40.3ドルから半減(52.9%減)する見通しだ。ただし、それでも2015~2019年の平均価格の3倍に近く、来冬に向けた十分な供給量の確保には課題が残る。

食料価格指数は132.4で、前年から7.9%下落の見通し。ただし、実際の食料価格は1975年以来で2番目に高い水準となり、世界食糧計画(WFP)によると、世界の約3億5,000万人超が食糧危機に直面すると予測する。金属・鉱物の価格指数は、製造業で需要薄が続くとし、前年比8.4%減の105.3とした。個別の品目では、ニッケルの2023年の価格が中国とインドネシアの増産により、前年比14.8%減(1トン当たり2万2,000ドル)の見通しとなった。ただし、グレードによって価格動向には差があり、世界のニッケル市場の4分の1を占める高グレードのクラス1ニッケルは、電子自動車の生産増に伴って価格は上昇傾向にある。

今後の価格上昇リスクとしては、原油供給量の不足、中国の需要回復の方向性、地政学的な緊張の高まり、天候リスクなどを挙げた。世界銀行は、ゼロコロナ政策が緩和された中国について、「サービス分野の回復が強い」と分析するが、一次産品価格に依存する分野が回復を牽引した場合、「エネルギー価格や金属価格の高騰を引き起こす」可能性を指摘した。

(田中麻理)

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