回復基調に潜む地域間格差の拡大を指摘、国連経済見通し

(世界)

国際経済課

2023年05月18日

国連経済社会局(UN DESA)は5月16日、「世界経済状況・予測」の2023年中間報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。2023年の世界の経済成長率(実質GDP伸び率)を2.3%と予測し、前回見通し(2023年1月)から0.4ポイント上方修正した(添付資料表参照)。上方修正の要因としては、米国およびEUにおける堅調な家計支出、ゼロコロナ政策を緩和した中国の回復を挙げた。

食料およびエネルギー価格の下落、世界経済の軟化により、インフレ圧力は緩和傾向にある。2023年の世界のインフレ率は5.2%の予測で、2022年の7.5%からは低下する見通し。主要国・地域における消費者信頼感指数、製造業購買担当者景気指数も2022年に底を打ち、足元では改善がみられる。しかし、アフリカ、南アジア、中南米などの一部の新興国・地域では、食料価格を中心とする高インフレが依然として深刻な問題であり、食料安全保障への対応が当面の最重要課題と位置付けられる。GDPを地域別にみると、2023年の先進国・地域平均は前回見通しから0.6ポイントの上方修正なのに対して、途上国・地域は0.2ポイントの上方修正にとどまる。世界全体では緩やかな回復が見込まれている半面、地域間格差の拡大が顕著となった。

金融市場では、2023年3月の米国・シリコンバレー銀行破綻を契機に、市場に混乱があったにもかかわらず、コアインフレ率が高く推移したことから、米国および一部の先進国では政策金利の引き上げを継続した。主要国・地域の中央銀行は金融引き締めのペースを緩め始めているが、「2023年にもさらなる利上げの可能性が残る」と指摘する。

UN DESAは「世界経済は依然として不確実性と低い経済成長に悩まされる」とし、長期化した新型コロナウイルスのパンデミック、ロシアによるウクライナ侵攻、気候変動の影響、金融政策運営の難しさなどのリスクは継続すると指摘する。2024年の経済成長率は2.5%と、2023年からはわずかに上昇の見通しだが、2000~2019年の平均成長率の3.1%には及ばず、「平均以下の成長期」の長期化リスクに警鐘を鳴らす。

(田中麻理)

(世界)

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