アップルの最新のインド戦略

(インド)

チェンナイ発

2023年05月17日

インドで、アップルストア(直営店)が4月にニューデリーとムンバイにオープンしたことは記憶に新しい(2023年4月20日記事参照)。アップルはインドでの生産(2022年12月2日記事参照)はもとより、販売も拡大していくとみられる。

アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は4月にインドを訪問し、直営店の開店イベントに登場するとともに、ナレンドラ・モディ首相と面会した。iPhoneのインド生産などにより、これまで2年間で間接雇用も含めて約10万人の雇用を生み出しているが、クックCEOはさらに10万人の雇用を約束した。一方で、インド政府に対し、政策の安定性や、部品エコシステムの構築などを求めたもようだ。なお、アップル製品のインド生産に関して、iPadやMacBookの計画は発表されていない。

現在、インドのスマートフォンの価格競争が激しいために、iPhoneは高級スマートフォンに分類され、アップルのスマートフォン市場シェアは現在5%未満だ。一方で、クックCEOは5月の四半期決算公表時に「多くの人が中間層になってきており、インドには変化の時が訪れている」と述べた。実際に、ユーロモニター・インターナショナルの推計によると、可処分所得の中間層(年間世帯可処分所得が5,000~3万5,000ドルの層)のインド全体の人口に占める割合は、2020年の52.8%から、2025年に69.8%まで増大する見込みだ。増加する中間層のスマートフォンの買い替え需要をiPhoneが取り込んでいく可能性がある。

インドで現在販売されているiPhoneの85%がインド生産とされ、これによりインド国外で生産した場合のiPhone完成品の輸入にかかる関税を払わずに済む。また、アップルは同社製品専門店をタタ・グループ傘下のインフィニティ・リテールへの委託によって展開することも検討しているもようだ。生産と販売の同時拡大によって、アップルはインドでの収益拡大を見込んでいるとみられる。

(浜崎翔太)

(インド)

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