ChatGPT、対話履歴の個人情報を管理できる新機能導入、プライバシー懸念を受け

(米国、イタリア)

ニューヨーク発

2023年05月02日

米国のスタートアップ、オープンAI(本社:カリフォルニア州サンフランシスコ)は4月25日、同社が開発した対話型人工知能(AI)「ChatGPT」に、利用者がチャットボットと交わした対話履歴を管理できる新たな機能を追加すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ChatGPTの利用に関しては3月20日、利用者とチャットボットの対話のタイトルをほかの利用者が一時的に閲覧できるデータ漏出が発生した。これを受け、イタリアのデータ保護当局は3月31日、同社によるプライバシー規制違反の疑いに関する調査を開始するとともに、国内でのChatGPT利用とオープンAIによる自国民ユーザーのデータの処理を一時的に禁止した。欧米諸国の中でChatGPTの利用を禁止したのはイタリアが初めてという。

今回の新機能は対話履歴を利用者の画面に表示させず、オープンAIの学習や改善にも利用しない設定を利用者が選べるようにするというもの。ただし、利用者がそのように設定した場合でも、不正使用を監視する必要がある場合に備え、データが削除される前に該当の履歴を確認できるよう、新しい会話の履歴は30日間保持されるとしている。

ChatGPTは、利用者が入力する質問に対して自然な対話形式で精度の高い文章を生成するチャットサービスとして注目を集め、利用も急速に拡大した。スイスの投資銀行UBSの調査結果によると、同社が2022年11月にサービスを開始してからわずか2カ月後の2023年1月には、月間アクティブユーザー数が1億人に達したと推定されている。これまで、中国系の動画共有アプリTikTokが世界展開を果たしてから、利用者数が1億人に到達するまで約9カ月の期間を要したが、この記録を上回り、史上最速で伸びた消費者向けアプリケーションと評価されている(ロイター2月2日)。オープンAIはまた、データやエンドユーザーを管理したい企業向けに、「ChatGPTビジネス」と名付けたサブスクリプションサービス(定期購入型サービス)を今後数カ月で展開するとも発表しており、ChatGPTのビジネスへの活用も増えることが想定される。

世界経済フォーラム(WEF)によると、ChatGPTなどに代表される生成型AI(ジェネレーティブAI)の特徴は、画像や文章、音声といった創造的なアウトプットを生み出せることで、この点がパターンの認識や予測を行うように設計された従来型のAIと異なる。調査会社CBインサイツによると、この分野は投資家の関心も高く、ジェネレーティブAI分野のスタートアップに対するベンチャーキャピタル(VC)の投資総額は2022年に26億5,400万ドルとなり、前年(15億4,800万ドル)の1.7倍を記録した。ジェネレーティブAIの分野では、これまでに6社のスタートアップがユニコーン企業(注)となっており、この中でもオープンAIの企業価値は200億ドル(2023年1月時点)に相当し、世界で最も評価額が高いジェネレーティブAIの企業として知られている。2位は機械学習モデルの構築プラットフォームなどを提供するハギング・フェイス(20億ドル)、3位は映像編集のアプリやツールを開発するライトリックス(18億ドル)となっている。

(注)企業評価額が10億ドル以上、かつ設立10年以内の非上場ベンチャー企業の総称。

(樫葉さくら)

(米国、イタリア)

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