2022年オンライン市場、減速するも外資系と物流の高度化が後押し

(ハンガリー)

ブダペスト発

2023年05月25日

市場調査会社GKIDと決済代行会社マスターカードは5月15日、ハンガリーの2022年のオンライン市場に関する共同調査の結果報告書「デジタル・コマース・ランドスケープ /I 2023」(注1)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

同調査によると、2022年のハンガリーのオンライン市場の売上高伸び率は前年比9.9%だった(添付資料図参照)。同市場の売上高は、2020年は新型コロナ禍によるリアル店舗ビジネスの閉鎖(デジタル化)という環境変化を受けて前年から45.4%も伸び、2021年は品不足や商品価格上昇による間接経済効果の影響を受けて32.5%の伸びだったことと比較すると、2022年は大幅な減速といえる(注2)。さらに、2022年のインフレ率(14.5%)を考慮すると、実質的には伸び率9.9%のプラス成長ではなく、マイナス成長だったことになる。同調査は減速の背景として、ロシアのウクライナ侵攻の影響による経済の混乱で生じた購買力の低下や記録的な高インフレを挙げた。

また、小売業売上高に占めるオンライン販売の割合は、2022年は9.6%で、2021年の10.4%から低下した。オンライン注文件数(7,710万件)は前年から11.8%伸びるペースで増加しており、同調査は、市場成長の主な原動力は買い物1回当たりの金額の増加ではなく、買い物頻度の継続的な増加だと結論付けた。

また、同調査は、外資系オンラインショップの浸透を指摘した。これは、欧州の多くのオンラインショップがハンガリー語のサイトや現地の顧客サービス、ハンガリー人顧客のニーズに合わせた決済・配送ソリューションを持つようになり、地元色を感じられるようになったことが一因だという。加えて、公共の場所に設置された宅配便ロッカー(注3)の拡大も、ハンガリーのオンライン販売を後押ししているとも指摘した。現在、国内にある約4,000台の宅配便ロッカーの半分以上に当たる2,500台以上が2022年に設置されたものだ。また、宅配便物流の高速化により、西欧の倉庫から発送する商品が注文翌日にはハンガリーの顧客に届けられるようになった。

オンラインショップの認知度ランキングでは、1位はルーマニアのeマグ(総合)、2位はチェコのアルザ(総合)、3位は中国のアリ・エクスプレス(総合)。上位30社のうち、ハンガリー資本は9社だけだった。

(注1)Digitális Kereskedelmi Körkép外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (デジタル・コマース・ランドスケープ)は、ハンガリーのデジタルコマースに関する包括的な調査。その一環として、デジタルコマースのエコシステム全体について年に3回調査を実施している。今回発表のものは、2023年の1回目の調査結果。

(注2)売上高の前年比伸び率は、ジェトロで計算した数字。GKIDの報告書7ページに書かれた2021年の前年比伸び率(32.0%)とは数字が若干異なる。

(注3)駅や商業施設などに設置し、都合の良い時間に荷物の受け取りや発送ができるロッカー。

(バラジ・ラウラ)

(ハンガリー)

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