欧州テクノロジー業界、2022年売上高はマイナス予測回避も、2023年は暗転予測

(EU、スイス)

ブリュッセル発

2023年05月22日

欧州機械・電気・電子・金属加工産業連盟(ORGALIM)は5月16日、2023年春季経済・統計報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。2022年の需要は予想以上に堅調だったが、2023年の先行きには慎重な見通しを示した。企業の投資意欲については、EUでさまざまな法案が可決されており、不確実性が高まっていることから、前回予測よりも低くなると分析した。

報告書は2022年の同業界の実質売上高を前年比4.8%増と推定。前回の秋季報告書では前年比マイナス予測だったが(2022年11月24日記事参照)、需要はその後堅調に伸び、予想を上回る結果となった。一方、労働力と原材料の供給不足は依然として続いていると指摘した。

2023年の売上高は前年比2.3%減と予測した。冬のエネルギー危機という「最悪の懸念」は回避したものの、需要増の兆しが見えていないことが見通しを低調にした。重要市場の中国経済の成長鈍化や、金利上昇などによる資金調達コストの増加も不透明感につながった。雇用面では2022年、同業界の労働者が前年比2.1%増の1,119万人と高水準を維持したとしたが、構造的な人材不足により今後の成長幅は限られるとした。

設備投資は前回予測以上の落ち込み、2023年はさらに減少と懸念

企業の設備投資については、2022年は前年比3.1%減、2023年はさらに落ち込んで7.5%減を予測した。先行き不透明な世界経済の動向に加え、欧州では新たに多くの法案が発表され、規制の不確実性が増していることや、収益減による投資資金不足が懸念されるとした。クリーンテックやエネルギー転換関連製品について、前例のない規模の補助金がEUなどから拠出される中、民間投資は低迷の懸念があるとして、投資環境の改善が重要だと指摘した。

報告書では、生産者価格の推移や単位労働コスト(ULC)にも言及。生産者価格は2022年、前年比で15.8%上昇したが、ピークは過ぎて改善の兆しがみられるとした。ただ、短中期的に新型コロナウイルス危機以前の水準に戻ることはないとした。また、ユーロ圏のULCは日米比較で依然としてかなり高水準にあり、欧州の産業力低下が顕著に表れているとした。ULCは将来的に急速なインフレに伴ってさらに上昇する可能性があるとして、競争力強化の必要性を示した。

(滝澤祥子)

(EU、スイス)

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