米ディスカウント百貨店センチュリー21、NYに旗艦店を再オープン、約3年ぶりの復活

(米国)

ニューヨーク発

2023年05月22日

米国ディスカウント百貨店のセンチュリー21(本社:ニューヨーク州ニューヨーク市)が同市ロウアー・マンハッタン地区の旗艦店の営業を再開したと、複数のメディアが516日に報じた。同社は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、売上高が減少したことなどから、20209月に連邦破産法第11章(日本の民事再生法に相当)の適用を申請し、米国各地の店舗を閉鎖していた。今回営業を再開した旗艦店は、経営破綻前の大規模な旧店舗から、小規模で合理化された店舗に改装され、約3年ぶりの復活を果たした。旗艦店の開所式には、ニューヨーク市のエリック・アダムス市長が参加してテープカットを行った。

写真 センチュリー21旗艦店(ジェトロ撮影)

センチュリー21旗艦店(ジェトロ撮影)

旗艦店は世界貿易センターの跡地やウォール街などに近い金融街に立地しており、店舗面積は旧店舗の半分程度の10万平方フィート(約9,290平方メートル)となっている。同社幹部によると、旗艦店では「宝探し」のような購買体験が得られ、魅力的なファッションを割安価格で提供する役割を担う。また、世界貿易センターの跡地に建てられたワンワールド展望台など、さまざまな小売り・ホスピタリティー事業の管理を手掛けるレジェンズが旗艦店の運営を担う。センチュリー21はこの提携を通じて、レジェンズが持つオムニチャネル運営のノウハウを駆使し、実店舗とオンライン上を組み合わせてより充実したショッピング体験を提供するとしている。

1961年創業のセンチュリー21は、新興ブランドや高級デザイナーズブランドの衣料品などを割安価格で販売するニューヨークの老舗百貨店として、熱心な顧客層を獲得してきた。しかし、2020年に新型コロナウイルス感染拡大や、これに伴うニューヨーク州や市の感染拡大防止措置により店舗を閉鎖した。営業再開後も苦戦を強いられ、店舗への来客数は通常の25%にとどまったという。その後、保険会社が閉鎖に起因する1億7,500万ドルの請求の支払いを拒否したため、同社は連邦破産法第11章の適用を申請した。2021年4月にはこの適用が承認され、再起に向けた取り組みが続いてきた(ブルームバーグ5月16日)。なお、ニューヨーク市会計検査院によると、新型コロナ禍には、同社を含め5,200以上の市内企業が閉鎖されたと推定されている。

米国では高インフレが長期化する中、日常必需品の価格上昇を補うために「お得」な商品を求める消費者が増え、オフプライスやディスカウント店がより多くの消費者に支持されている。全米小売業協会(NRF)が公表している「米国で最も急成長している小売企業(2022年)」のランキングでは、上位10社のうち、ディスカウント店が6社を占める(添付資料表参照)。同ランキングでは、全世界の売上高が20億ドルを超える小売企業を対象に、2020年から2021年にかけて国内での売り上げの伸び率を基に、順位が決定される。これによると、1位には金物店のハーバー・フレイト・ツールズがトップに立ち、2位には衣料品大手のインディテックスがランクインする。ただし、3位以降には、バーリントン、ディラーズ、TJXカンパニーズなどのディスカウント店が大多数を占めており、それぞれ2021年に50%以上の売り上げ増加を遂げている。

(樫葉さくら)

(米国)

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