大統領が就任宣言、ティヌブ新政権が発足

(ナイジェリア)

ラゴス発

2023年05月31日

ナイジェリア大統領の就任式が5月29日、首都アブジャで行われ、2月に実施された選挙(2023年3月1日記事参照)で当選した、与党・全進歩会議(APC)のボラ・ティヌブ大統領とカシム・シェッティマ副大統領が就任宣言を行った。日本からは、田中和徳総理特使(日本・ナイジェリア友好議員連盟会長)が参列。また、ナイジェリア政府は今回の就任式の日を祝日とした。

ティヌブ大統領は南部のラゴス州元知事、シェッティマ副大統領は北東部のボルノ州元知事で、いずれもイスラム教徒だ(注1)。

大統領は就任演説で、憲法と法の支配に基づく公平な統治、テロや犯罪に対する防衛強化、雇用の創出、食料の安定供給、貧困解消のための経済改革、女性と若者の活躍、汚職の防止といった行動指針を表明した。

経済政策については、高いインフレの抑制、財政措置を活用した国内製造業の振興および輸入への依存低減、発電量の倍増と安定的な電力供給を掲げた。加えて、投資阻害要因の見直しと、投資家や外国企業が稼いだ配当や利益の本国送金の保証を約束した。

雇用については、デジタル経済で100万人の新規雇用を創出するという選挙公約を守ると訴えたほか、前政権が徐々に廃止していく方針を定めた燃料補助金の財源を、公共インフラ、教育、医療、雇用などに振り分けたいとした。また金融政策として、中央銀行が為替レートの統一に取り組み(注2)、実体経済への投資に振り向けつつ、投資と購買力を増やすために金利は引き下げるべきと述べた。

なお、今回の大統領選挙結果を公平性がなく不透明だったとして、野党の人民民主党(PDP)と労働党(LP)は、大統領選挙請願裁判所に提訴をしている。ティヌブ大統領は就任演説の中で、野党のこの訴えは法の支配のもとで認められる権利の行使であると述べる一方で、政治的隔たりを超えた南北の地域の融和を訴えた。

(注1)ナイジェリアでは1999年の民政移管以降、北部と南部、イスラム教徒とキリスト教のバランスに配慮して選出されてきた。ブハリ前大統領は北部出身のイスラム教徒、イェミ・オシンバジョ前副大統領は南部出身のキリスト教徒だったが、今回は、イスラム教徒の多い北部からキリスト教徒の副大統領を選ぶことは見送られたかたちだ。

(注2)ナイジェリアでは多重為替制度が採用されており、中央銀行レートが現在1ドル=約460ナイラなのに対し、市中レートは760ナイラで、レートが乖離している。

(奥貴史)

(ナイジェリア)

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