政府、法人税などの増税策含む財政再建案を発表

(チェコ)

プラハ発

2023年05月17日

チェコ内閣は5月11日、財政再建に向けた58の改正案から成る「健全化パッケージ」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2024~2025年の財政赤字1,475億コルナ(約9,293億円、1コルナ=約6.3円)の削減を目指すもので、内訳は助成金削減、公務員賃金・国営機関運営費の削減などによる支出減額が53%(783億コルナ)、増税などによる増収額が47%(692億コルナ)となっている。2024年には941億コルナを削減する計画だ。

主な増収措置は次のとおり。

〇企業・雇用関係

  • 法人税率を19%から21%に引き上げ
  • 法定外福利厚生に対する税制優遇の一部撤廃
  • 被雇用者負担の病欠保険料支払い義務を再度導入(現行0%から0.6%へ)
  • 個人所得税23%の適用範囲を拡大(注1)
  • 職務遂行契約(DPP)に基づく被雇用者の賃金に対する社会保険料支払い義務の拡大(注2)

〇税制ほか

  • 付加価値税(VAT)の第1軽減税率15%、第2軽減税率10%を12%に統一。一部の製品・サービス(生ビール、新聞、廃棄物回収、美容・理容など)に基本税率21%を適用。書籍に関しては付加価値税を撤廃。食品、建設作業など軽減税率が15%から12%に引き下げられる品目もある。
  • 国内高速道路使用料の引き上げ
  • 不動産税の引き上げ
  • たばこ、スピリッツの物品税、賭博税の引き上げ

チェコの2022年の財政赤字額は3,604億コルナで、前年の4,197億コルナを下回ったが、2023年に入って急増しており、5月2日付の財務省プレスリリースによると、1~4月で既に2,000億コルナに達し、前年同期から倍増している。ペトル・フィアラ首相は、赤字をいま抑制しなければ、将来に歯止めがきかなくなると警告し、「現政権は現在も今後も責任ある財政管理を行い続ける」と宣言した。各改正措置に関しては「諸税の中には引き上げになるものもあるが、税制改正による国民と被雇用者への影響は最低限となるよう全力を注いだ」と説明している。

産業界は、政府の草案過程で企業団体との協議がなかった点に不満を表明している。産業連盟は5月11日付の声明で、財政再建の必要性は認識しているとしながらも、「国内企業の国際競争力に影響し、われわれが反対せざるを得ない措置が含まれている」と指摘、例として、法人税率の2%引き上げ、福利厚生に対する優遇税制の一部廃止などを挙げた。

内閣は、財政再建案パッケージのうち、2024年の赤字削減部分(941億コルナ)が2024年1月1日付で発効するよう、同案を6月中に可決し、議会の夏季休会前に下院での審議を開始させたいとしている。

(注1)基本税額は15%。23%の税率は現行では所得額と平均賃金の4倍との差額に適用しているが、適用対象を所得額と平均賃金3倍との差額に拡大することを提案している。

(注2)DPPでは、雇用時間を年間300時間に制限する一方で、現行では月額賃金が1万コルナ未満の場合、社会保険料の支払い義務を免除している。改正案では、社会保険料の支払い義務の免除対象は、月額賃金がチェコの平均賃金の25%未満の場合のみとしている。複数のDPP契約を締結している場合には、DPPによる賃金合計がチェコの平均賃金の40%未満の場合のみ、社会保険料の支払い義務を免除することを定めている。

(中川圭子)

(チェコ)

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