中国、米マイクロンにサイバーセキュリティー審査実施へ、米半導体企業に初
(中国、米国)
北京発
2023年04月04日
中国の国家インターネット情報弁公室は3月31日、半導体メモリーやストレージの設計・開発・製造などを行う米国のマイクロンについて、中国で販売している製品に対しサイバーセキュリティー審査を行うと発表した(注1)。理由は、重要インフラのサプライチェーンの安全確保、製品の問題による隠れたリスクがもたらすサイバーセキュリティーリスク防止のためとしている。具体的な対象製品などは公表されていない。
中国企業の例では、2021年7月2日にタクシー配車アプリ最大手の滴滴出行に審査を行うと発表、2022年7月21日に個人情報の違法収集などの行為に基づいて80億2,600万元(約1,524億9,400万円、1元=約19円)の罰金を科すと発表した。
4月3日付の「環球時報」では、米国の半導体関連企業に対する初の審査だとしている。その上で、過去には中国のマイクロン製品に対する依存度は高かったものの、近年は米国の制裁によるサプライチェーンへの影響や中国企業の成長により、依存度は大幅に低下しているとしている。
中国外交部は4月3日の記者会見で、今回の審査は正常な監督・管理のための措置で、どこの国の企業であっても中国の法律を順守すべきとした。
マイクロンは中国では北京市、上海市、広東省深セン市、陝西省西安市に拠点を有する。同社の2022年の収益(注2)は307億5,800万ドル、うち中国は33億1,100万ドルとなっている。中国の全体に占めるシェアは10.8%で、米国(160億2,600万ドル)の52.1%、台湾(61億8,500万ドル)の20.1%に次いで、3位にとどまっている。
また、工場などの長期資産は総額(392億2,700万ドル)のうち、33.5%が台湾、30.7%がシンガポールに置かれており、中国は0.9%となっている。中国では西安市でアセンブリのみを行っており、研究開発やウエハー製造の拠点は台湾、シンガポール、米国、日本に置かれているため、審査の研究開発・製造への影響は限定的なようにみえる。
一方で、2018年まで発表された仕向け地ベースでの売り上げでは、中国が57.1%を占めていた。中国内で同社の製品・サービスが制限された場合、同社の収益や顧客企業の現地での生産などには大きな影響が生じる恐れがある。
(注1)サイバーセキュリティー審査については2022年1月18日記事参照。
(注2)顧客の本社所在地ベースでの収益。
(河野円洋)
(中国、米国)
ビジネス短信 ed32886038feab5c