ネハンマー首相が自動車サミットを開催、燃料技術の多様性を強調

(オーストリア)

ウィーン発

2023年04月25日

EUの2035年の全新車ゼロエミッション化(2023年3月30日記事参照)に向けて、オーストリアの自動車部品産業界は、ドイツをはじめとした輸出市場の縮小、雇用の喪失、研究開発費用の削減を懸念していると報じられた(「デア・スタンダード」紙4月19日)。オーストリア製の自動車・エンジン部品の70%はドイツに輸出されており、ドイツの自動車メーカーが生産を電気自動車(EV)に転換すると、EU域外の顧客の開拓が必要となると報じた。フラウンホーファー・オーストリア研究所のオーストリア自動車産業の転換に関する調査レポートに基づき、同業界の従業員4万人は2035年までに3分の2に減少する見通しで、現在、間接的に自動車産業に関わっている企業の従業員12万人のうち、何人が電動車への転換に伴い、電気産業やエネルギー産業へ移転できるかが重要な課題で、そのためには企業の製品の調整と従業員の教育や再訓練が必要とした。

この現状を受けて、カール・ネハンマー首相は4月19日、業界関係者を集めて自動車サミットを開催した。サミットでは、オーストリアを自動車に関する研究、イノベーション、生産の地として確実にする方法や、どの技術が将来のモビリティの発展のために使用できるかなどが議論された。ネハンマー首相は、これまで国内外に合成燃料を宣伝してきた。EUでは、ドイツなどと共に合成燃料を使用する内燃機関搭載車の販売継続を求めていた。サミット後、同首相は「グリーン内燃機関や電気モビリティーの新しい可能性など、オーストリアはあらゆる分野で開発の促進に貢献できる。自動車や研究、イノベーションの拠点として、オーストリアには大きなチャンスがある」と述べ、「転換過程を有意義に生かせば、新しい雇用を創出する可能性もある。EU内だけでなく、米国や、中国などアジアの競争相手に対しても競争力を確保することが最大の課題だ」と加えた。

マルティン・コッハー労働・経済相も技術の多様性を強調し、現在EUの補助金の対象になっていない研究課題(例えば合成燃料など)も支援可能にすることに関し、EUの首脳を説得する必要があると述べた(「オーストリア通信(APA)」4月20日)。

一方、環境保護団体や専門家、連立パートナである緑の党は、ネハンマー首相の合成燃料へのこだわりを厳しく批判している(「オーストリア通信(APA)」4月20日)。レオノーレ・ゲベッスラー気候行動相は3月22日付のクリエ紙で「他の選択肢がない航空や船舶などでは合成燃料は不可欠だが、2035年以降、乗用車を合成燃料で動かすことができると思うのは誤っている。」と述べた。

(エッカート・デアシュミット)

(オーストリア)

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