生成AIサービスに社会主義核心価値観の反映を要求、管理弁法の意見募集開始

(中国)

北京発

2023年04月13日

中国の国家インターネット情報弁公室は4月11日、「生成人工知能サービス管理弁法(意見募集稿)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に関する意見募集を開始した。米Open AIの「Chat GPT」や百度の「文心一言」などに代表される生成人工知能(生成AI)の中国内でのサービス提供に当たって守るべき点や罰則を定めたもの。意見募集の締め切りは5月10日。

弁法での生成AIの定義は、アルゴリズム、モデル、テキスト生成のための規則、画像、音声、動画、コード、その他のコンテンツを生成する技術とされている。

これらにより生成されるコンテンツは社会主義核心価値観(注)を反映し、国家権力の転覆や、社会主義体制の打倒、分離独立の扇動、国民統合の破壊、テロリズムや過激主義の吹聴、民族憎悪、民族差別、暴力、わいせつ・ポルノ情報、虚偽情報の拡散、経済秩序や社会秩序を乱す可能性のある内容は含まれてはならないとされている。

また、知的財産権やビジネス倫理の尊重、肖像権・名誉権・個人のプライバシー保護なども求められているほか、生成されるコンテンツは真実かつ正確であるべきとして、虚偽情報の生成を防止する措置が求められている。

サービス提供者は生成されるコンテンツの作成者としての責任を負い、個人情報保護義務を履行することが求められる。サービス提供前に政府関連部門によるセキュリティー評価を受けるとともに、アルゴリズムを登録する必要がある。また、事前学習データや最適化学習データの適法性についても責任を負う。

サービス提供者が利用者に対して身元情報を求めることも義務付けるほか、サービスへの過度な依存や中毒を防ぐ措置を講じることも求める。その他、苦情受け付けの仕組み構築や、利用者の入力情報や利用記録を保護する義務も課す。

同弁法に違反した場合は、「サイバーセキュリティー法」「データセキュリティー法」「個人情報保護法」などに基づいて処罰されるほか、法律上の規定がない場合は1万元(約19万4,000円、1元=約19.4円)以上10万元以下の罰金や治安管理処分などを科すことができるとしている。

4月12日の「証券日報」は弁法について、生成AIの発展は情報漏洩などのさまざまなリスクがある一方で、AI自身は法律上の権利義務の主体とはなり得ないため、サービス提供者に対する法律的制限を科すために必要なものとしている。

(注)中国共産党が提唱する、富強、民主、文明、和諧(調和)、自由、平等、公正、法治、愛国、敬業(勤勉)、誠信(誠実)、友善(友好)を基本内容とする価値観。

(河野円洋)

(中国)

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