欧州鉄鋼と科学技術産業、包装廃棄物規則案へ提言

(EU)

ブリュッセル発

2023年04月27日

欧州鉄鋼連盟(EUROFER)や欧州機械・電気・電子・金属加工産業連盟(ORGALIM)は4月21日、欧州委員会が2022年11月に発表した包装・包装廃棄物に関する規則案(2022年12月2日記事参照、注)について、政策提言書をそれぞれ発表した。

スチール缶など鉄鋼は包装材としても活用されることから、鉄鋼業界は規則案に強い関心を持っている。EUROFERは欧州容器用鉄鋼協会(APEAL)と連名で提言書を発表し、規則案を大筋で支持した上で、廃棄物をできるだけ出さない資源循環を実現するため、欧州委の提案より厳しいリサイクル要件の設定などを求めた(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

例えば「リサイクル可能な包装」の基準について、複数回リサイクルでき、リサイクル材が一次原材料に代わるのに十分な性能や品質を維持するものであるべきとした。また、規則案で目指す「大規模リサイクル」は、2035年以降「EUの人口の少なくとも75%が出す廃棄物を収集・分別・リサイクルする」としているが、提言書ではEUレベルの実現に向けて「人口の90%、かつ3分の2以上の加盟国で」とすべきとした。なお、2020年のスチール包装のリサイクル率は85.5%と非常に高い。提言書は、リサイクル率の低い包装についてのみリサイクル材含有率目標を設定するとした規則案を支持した。

このほか、埋め立て処分による廃棄物処理をさらに減らすため、現行の埋め立て処分指令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの改正や、規則案では一律に目標設定した加盟国の包装廃棄物削減目標について、資材別の目標設定が必要とした。ドラム缶などは販売用包装で、運送用包装の再利用(リユース)目標の対象ではないことも主張した。

ORGALIMも規則案を歓迎(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。その上で、ピクトグラムを使ったEU共通の原材料表示ラベルや、共通ラベルの要件策定では、デジタル表示も選択肢とすることなどを提言した。

一方、懸念点として、(1)リサイクル材の含有量目標は現実的であること、(2)新規則や関連法令の適用まで十分な移行期間と特殊な包装に対する適用免除があること、(3)行政負荷の軽減、(4)再利用に関する要件は徹底した影響評価が必要なことを挙げた。(1)について、目標設定はリサイクル材市場の成長につながると期待を示したが、供給量や品質の確保、コストの低下が必要で、十分な再生プラスチックを入手するには、域内のインフラ整備やケミカルリサイクルの活用が必要と訴えた。(4)については、欧州委の影響評価は不十分だと指摘した。

このほか、製品レベルではなく、製造施設や企業レベルで再利用の要件を算出することや、再利用制度の効率性やメーカーにとっての経済的実行可能性などの評価に当たって、ライフサイクル評価を導入することなどを提言した。

(注)ジェトロの調査レポート「EUの循環型経済政策(第2回)包装・包装廃棄物規則案を中心とする2022年政策パッケージ第2弾」(2023年3月)も参照。

(滝澤祥子)

(EU)

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