欧州投資銀行、ワロン地域政府と水素産業の創出に向けたMOUを締結

(EU、ベルギー)

ブリュッセル発

2023年04月20日

欧州投資銀行(EIB)は4月13日、水素産業の創出に向けた協力関係強化のための覚書(MOU)を、ベルギー南部のワロン地域政府(注1)と締結したと発表(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。

ワロン地域では、競争力強化のための戦略的イノベーション・イニシアチブとして19のプログラムを採択している。水素分野はE-WallonHYプロジェクトとして、グリーン水素(注2)の製造や、貯蔵、輸送に加えて、高純度水素の最も有望な用途である運輸、建設、アンモニア製造などの産業プロセスでの使用促進を目指すことで、バリューチェーン全体を包含するグリーン水素経済の発展を促そうとしている。今回締結されたMOUに基づきEIBは、通常実施しているプロジェクト総額の最大50%までの融資に加えて、市場ニーズやギャップの特定、優先すべきプロジェクトや、投資案件を特定するための支援を行う。

今回のMOUに先立ち、ワロン地域政府は、「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」(注3)として承認済みの水素関連プロジェクト2件に対し、EU復興基金を通じて総額8,800万ユーロの支援を行っている。2件の詳細は以下のとおり。

  • 「Columbus」:エンジー・エレクトラベル(フランス・エネルギー大手のベルギー子会社)、カルミューズ(鉱物資源開発)、ジョンコックリル(エンジニアリング)の3社が参画する二酸化炭素(CO2)回収・有効利用(CCU)プロジェクト。石灰を製造する過程で発生するCO2を濃縮し、グリーン水素と反応させることにより、合成メタン(e-メタン)を製造、天然ガスの代替や運輸・産業部門での活用を目指す。使用するグリーン水素の生産には、75メガワット(MW)規模の電解槽を使用する。
  • 「ジョンコックリル・ハイドロジェン」:100メガワット(MW)以上の大規模な電解槽製造工場を建設し、生産・輸出することを目指す。電解槽の中核部品である水電解用セルスタックはフランス北東部のアルザス地方で製造される予定で、組み立てはベルギーのワロン地域リエージュ州のスランで行う。ジョンコックリルは、電解槽の高効率化に関する研究開発などにも参画している(2023年3月30日記事参照)。

(注1)ベルギーは連邦制で、経済政策は地域政府が管轄している。

(注2)再生可能エネルギーを利用して水を電気分解することで製造し、製造工程でCO2を発生させないもの。

(注3)イノベーションの必要な重点産業への複数の加盟国による共同支援を可能とする、EU国家補助ルールの特例措置。

(大中登紀子)

(EU、ベルギー)

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