2023/2024年度の予算案公表、企業支援措置と電子消費券配布を継続

(香港)

香港発

2023年03月01日

香港特別行政区(以下、香港)政府は2月22日、2023/2024年度(2023年4月~2024年3月)の財政予算案を発表した。併せて、2022年通年の実質GDP成長率(確定値)をマイナス3.5%と公表し、2023年通年の成長率を3.5~5.5%とする見通しを示した。

2023/2024年度予算案では、2022/2023年度予算において実施した、中小企業向け信用保証制度について申請期限を2024年3月まで延長。また、2022/2023年度の個人所得税および法人税の免除措置と、2023/2024年度第1四半期および第2四半期の企業および個人に対する固定資産税の減免措置についても、それぞれ現行から上限額を引き下げるかたちで継続するとした。このほか、電子消費券の配布を再び計画。1人当たりの支給額を2022/2023年度の半額となる5,000香港ドル(約8万5,000円、1香港ドル=約17円)に引き下げ、香港永住権を有する18歳以上の市民らを対象として、まず3,000香港ドルを4月に、残額を2023年半ばに分割支給する。

新たな措置としては、家計向けには、初回の住宅購入者を対象に印紙税を調整するほか、児童手当の増額を実施。企業に対しては、香港政府所有の不動産物件の賃料を2023年7月から6カ月間50%減免する措置を盛り込んだほか、条件を満たす旅客輸送事業者および旅行代理店に対して融資額を全額補償する支援スキームを2023年4月に立ち上げるとした。

また、香港政府が主導するWeb3(分散型ウェブ)エコシステムの開発に向け、「数碼港」(サイバーポート、注)内に設置された「Web3 Hub」に5,000万香港ドルを当てることや、仮想通貨の持続的な開発に向けたタスクフォースを設置することが盛り込まれた。さらに、環境に配慮したプロジェクトの資金調達支援を掲げ、グリーンテクノロジー・金融発展委員会を設立し、関連イベントの開催も計画。このほか、政府が力を入れる人材誘致の一環として、香港への一定額の投資(不動産投資を除く)を条件に居住権を認める「資本投資者入境計画(投資移民スキーム)」を再導入する方針を示した。

これらの結果、2023/2024年度予算案の歳出は約7,610億香港ドル、歳入は約6,424億香港ドルとなり、約650億香港ドルの政府債券発行分を含めると財政赤字額は約544億香港ドルに上る。また、2022/2023年度の財政赤字額は、当初見込みを840億香港ドル上回る約1,400億香港ドルとなり、2023年3月末時点での財政準備金は約8,173億香港ドルに減少する見通し。香港政府は、財源確保に向け、サッカーくじに対する税を香港競馬会から今後5年間にわたり毎年24億香港ドル追加で徴収するとし、たばこ税も増税。2024/2025年度から2027/2028年度にかけて財政黒字への転換を目指し、2028年3月末時点での財政準備金を約9,837億香港ドルと見込む。

(注)「数碼港」(サイバーポート)は、香港政府が2003年に建設した研究開発およびイノベーション推進拠点。

(松浦広子)

(香港)

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