ポーランド、陸上風力の設置に関する改正法が成立

(ポーランド、EU)

ワルシャワ発

2023年03月31日

ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領は3月13日、陸上風力に関する法律改正案に署名した(翌14日付政府プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。これまでポーランドでは、2016年に施行された陸上風力発電所の設置に関する法律によって、新たな風力発電所展開の可能性を規制していた。同法では、風力発電所と家屋との距離を風力発電装置の全高の10倍以上とすると定めていた(いわゆる「10Hルール」)が、今回の改正によって最低距離は700メートルに短縮された。

欧州委員会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、ポーランドのエネルギーミックスで再生可能エネルギー比率を上げるため、EU復興基金からポーランドの洋上風力発電所やターミナルインフラへの37億ユーロ以上の資金提供の条件の1つに、風力発電所の距離規則の緩和を定めた。その条件を満たすため、ポーランド政府は最低距離を500メートルとする法案を起草したが、下院はこれを700メートルに引き上げた。その後、上院はまた500メートルに戻したが、最終的に下院はこの修正案を否決したと報じられていた。

今回可決された改正法の主な規制は以下のとおり。

  • 風力発電所と家屋との最小距離は700メートル以上とする(例外あり)。
  • 新たな風力発電機の設置の際に、風力発電所と家屋との距離を決める「地域空間開発計画」(注1)の決議、その根拠となる協議や「環境の影響に関する戦略的評価」(注2)が必要。
  • 風力発電の投資家は2024年7月以降、発電所の10%以上発電容量を現地の生産消費者に提供する。

ポーランド政府は、今回の法改正はエネルギーミックスをさらに安定化させ、地域コミュニティーの意思に沿った再生可能エネルギーの開発に弾みをつけるだろうとしている。

また、マテウシュ・モラビエツキ首相は、政府が提案した500メートル規制は国内の風力発電所数を考えれば得策だったが、近隣住民にとっては受け入れ難かったため、700メートル規制は良い妥協策と発言した〔3月15日付ポーランド通信社(PAP)〕。

一方、ポーランド風力エネルギー協会(PWEA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、距離規制を500メートルから700メートルに引き上げることによって、ポーランドの総風力発電所容量は60~70%で減少すると想定している。

(注1)土地の利用と開発について定めるポーランドの基礎自治体(グミナ)の計画。

(注2)騒音による住民への健康被害や環境への影響などを分析するもの。

(ニ―ナ・ルッベ)

(ポーランド、EU)

ビジネス短信 bb346d5cbe1f5099