HSBC、破綻した米シリコンバレー銀行の英国法人を買収
(英国)
ロンドン発
2023年03月14日
英国金融機関のHSBCは3月13日、破綻した米国シリコンバレー銀行の英国法人シリコンバレー銀行UK(SVB UK)を1ポンド(約162円)で買収することを発表した。取引は即時完了している。HSBCによれば、3月10日時点でSVB UKの融資額は約55億ポンド、預金額は約67億ポンドとされている。
英国財務省とイングランド銀行(中央銀行)も同日、同行によるSVB UKの買収について声明を発表した(財務省プレスリリース、イングランド銀行プレスリリース)。今回の取引の結果、SVB UKの顧客の預金は保護され、SVB UKの営業もこれまでどおり継続されるとしている。また、従業員も引き続きSVB UKによって雇用されるとしている。
イングランド銀行はこれに先立つ3月10日、SVB UKが英国で有するプレゼンスは限られており、英国の金融システムにおいて決定的な機能は果たしていないとして、銀行破綻手続きを進める意向を示していた。しかし13日、財務省、関係当局との協議を踏まえ、英国のテックセクターに与える混乱を最小化し、金融システムの信頼感を損なわないよう、今回の売却を決定したとした。
英国では、金融危機時の2008年に、破綻した銀行への対応のため、銀行(特別条項)法が成立、財務省に対し一時的に、秩序ある破綻処理を進めるための権限を付与。その後、翌2009年に銀行法が成立し、財務省や中央銀行が財政難に陥った銀行に対応できるよう、恒久的な特別破綻処理制度(SRR)を設けた。今回の決定はSRRに基づくもの。
ロイター(3月13日)によれば、英国の複数の上場企業が投資家への安心供与のため、SVB UKとの取引状況に関して声明を発表したとしている。BBC(3月13日)は、SVB UKと取引を有するテック企業のコメントを紹介、HSBCによる買収は「大きな安心」とした。
ガーディアン(3月13日)は、今回の破綻により、イングランド銀行による政策金利の大幅な利上げという、金融市場の予測は弱まったと報じた。
(山田恭之)
(英国)
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