AMLO大統領、米テスラがメキシコ北部国境ヌエボ・レオン州に新工場建設と発表

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2023年03月01日

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は2月28日の会見で、米国テスラが電気自動車(EV)の新工場を米国との国境に位置するヌエボ・レオン(NL)州に建設する計画と発表した。前日に同社の最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏と電話で協議して合意したと述べた。テスラの正式発表は3月1日を予定しており、AMLO大統領からは投資規模や想定雇用数などの言及はなかった。テスラにとって米国(カリフォルニア州とテキサス州)、中国、ドイツに次いで5カ所目の工場となる。また、28日の大統領会見を受け、NL州のサムエル・ガルシア知事はツイッターを通じて「メキシコが勝った、ヌエボ・レオン州が勝利した」と述べた。

テスラの進出に関しては、2022年10月にマスク氏がNL州モンテレイ市周辺を訪問し、12月に米ブルームバーグ通信などがテスラが同州でのEV工場新設に動いていると報じたことで、メキシコ国内で大きく話題となっていた。しかし、2023年2月に入って、AMLO大統領はNL州の水不足を理由にして、自身の肝いり政策のフェリペ・アンヘレス新国際空港の周辺にテスラが進出すると複数回の会見で述べていた。だが実際は、マスク氏との電話協議で、テスラが進出先での水不足問題に企業として対処していくと伝えたことを受け、メキシコの社会問題解決に取り組む条件を世界的な大企業から引き出したと、自身の交渉力を国民に示した。

米国への通関容易性に利点

テスラの本社が所在するテキサス州とNL州は国境で接しており、NL州からは特に工業製品の輸出が盛んだ。州都モンテレイ市から北に約250キロに位置する両州境のコロンビア橋の検問所では、NL州政府側から申し出て設置されたというテスラ専用の通関レーンもあり、メキシコ国内で製造された同社向け自動車部品が迅速に通関されている。同州経済局によると、メキシコと米国の一般的な国境検問では貨物通関に約5時間を要するが、コロンビア橋を経由する場合は、メキシコ側での貨物検査を省略できるため、約20分で通過できるという。また、2023年12月には、テキサス国境を通過するグロリア・コロンビア高速道路が完成予定だ。同道路の通行料は無料で、治安強化のため、国境を超えるまでにNL州警察が4カ所の警備ポイントを設置する予定だ。

(志賀大祐)

(メキシコ、米国)

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