英国政府、国家量子戦略を発表

(英国)

ロンドン発

2023年03月24日

英国政府は3月15日、10年後のビジョンを設定した国家量子戦略を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。英国は、2014年以来、量子技術の研究開発に10億ポンド(約1,610億円、1ポンド=約161円)を投資しており、現在、英国における量子分野の企業数と当該分野に対する民間投資は世界トップレベルとなっている。

同戦略では、英国の量子分野における強みとして、研究施設の多さや研究内容の質の高さ、人材、スタートアップの数と投資額、ビジネスコミュニティーとのつながり、外国企業の進出のしやすさなどが強調されている。一方、課題としては、技術の不確実性がまだ高く、商業化も初期段階にあること、また、他分野との製造施設の利用競争や、他国との人材獲得競争などが挙げられた。

戦略では、4つの目標を立てている。

  1. 英国を世界トップレベルの量子研究と技術を誇る国にする。
  2. ビジネスを支援し、世界中から投資家と人材を引き寄せる。
  3. 量子技術の導入を促進する。
  4. 量子技術のイノベーションや倫理的な使用を支援する規制枠組みを確立する。

これらの目標の達成に向けて、以下を含む13の優先行動が示されている。

〇2024年から10年間、量子研究開発に25億ポンドを投資。投資対象は以下のとおり。

  • 研究拠点のネットワーク
  • 開発や商業化を促進するためのアクセラレータプログラム
  • 研修・人材育成プログラム
  • 国際パートナーとの共同研究開発プログラム
  • 研究者や企業が必要とするインフラ
  • 基礎研究
  • 国家量子コンピューティングセンター(National Quantum Computing Centre)

〇2023年から量子技術への投資を増強。

  • 量子コンピューティングと測位・航法・タイミング(PNT)に向けて7,000万ポンド
  • 量子コンピューティング、通信、センシング、イメージングなどの研究拠点開発に向けて1億ポンド
  • 量子フェローシップや博士号取得者の養成に向けて2,500万ポンド
  • 公共利用を目的とした量子技術の政府調達に向けて1,500万ポンド
  • 量子ネットワークの共同研究開発に向けて2,000万ポンド
  • 国家量子コンピューティングセンターを通じた活動拡大に向けて2,000万ポンド
  • 国際科学パートナーシップ基金を通した国際協力の増強

〇実習スキームや量子研修プログラムなどを実行し、人材育成を強化。

〇米国とインドで高度技術人材の英国への誘致を行う「グローバル人材ネットワーク」に量子分野の優先枠を設定するなど、外国からの高度技術人材の誘致を拡大。

〇外国の量子関連企業の英国進出を支援。

〇政府に規制改革を提案するレギュラートリー・ホライゾンズ・カウンシル(RHC)により、量子技術規制の今後のニーズを把握するためのレビューを行う。

(レイナー・あや)

(英国)

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