綿花生産の大幅減少で繊維製品輸出に影響か

(パキスタン)

カラチ発

2023年03月29日

パキスタン政府は317日、内閣経済調整委員会(ECC)において、2023/2024年度(20237月~20246月)の綿花介入価格(CIP)を40キログラム当たり8,500ルピー(約3,910円、1ルピー=約0.46円)とすることを決定した(BR紙ほか319日)。国家食料安全保障・調査省(MNFSR)は閣議資料の中で、パキスタンの2022年の綿花生産量が洪水被害や水不足などで生産量目標900万俵に対して478万俵にとどまったと報告した(BR319日)。主力産業である繊維産業を支える綿花生産が大幅に落ち込んだことから、政府は播種(はしゅ)シーズン(35月)前にCIPを前年比2,800ルピー増と大幅に引き上げ、来年度の栽培面積と生産を1015%程度拡大したい考えだ。

パキスタンの綿花生産は、直近のピークだった2014/2015年度の1,395万トン(耕作面積296万ヘクタール)から2020/2021年度には706万トン(同207万ヘクタール)とほぼ半減し、不足分を米国やブラジルなどからの輸入でまかなった。2021/2022年度には綿花輸入額は228,200万ドル(前年度比20.5%増)に達し、この金額は四輪車および二輪車のCKD(完全現地組み立て部品)輸入額(225,300万ドル)に匹敵する。

パキスタンは現在、厳しい外貨不足に直面しており、パキスタン中央銀行(SBP)の外貨準備高は431,900万ドル(310日)と輸入1カ月分程度にまで減少している。日系企業を含むあらゆる企業が、輸入のためのL/C(信用状)開設や決済(海外送金)で非常に困難な状況に立たされている。繊維産業はパキスタン全輸出の6割弱を占める重要産業であることから、輸出を維持するためには今後、綿花の輸入を増やさざるを得ず、輸入が困難な場合は輸出に支障が生じる恐れがある。

最大の繊維業界団体の1つである全パキスタン繊維工業協会(APTMA)のある幹部は2023324日、ジェトロの取材に対し、「パキスタン繊維産業による綿花の2022年の需要は1,500万俵で、繊維製品の輸出額は194億ドルだった。APTMA2023年の綿花需要は1,700万俵、輸出260億ドルを目指していた。しかし、電気ガス不足、通貨ルピーの暴落などにより、企業の資金繰りが悪化しており大幅な見直しがなされる見込みだ。原料・部材輸入のためのL/Cが開けず、また外国バイヤーからの注文が落ちている現状では、2023年の綿花需要を1,000万俵前後、うち500万俵が国産、500万俵が輸入となるとみている」と悲観的な見通しを語った。

写真 手摘みで収穫される綿花(カラチ郊外、ジェトロ撮影)

手摘みで収穫される綿花(カラチ郊外、ジェトロ撮影)

(山口和紀)

(パキスタン)

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