鉄鋼大手フェストアルピーネ、脱炭素化に15億ユーロの投資を発表

(オーストリア)

ウィーン発

2023年03月29日

オーストリアの鉄鋼大手フェストアルピーネは3月22日、同社の鉄鋼の製造工程における脱炭素化に向けた15億ユーロの投資につき、同社の監査役会の承認を得たと発表した。

現在、フェストアルピーネは、二酸化炭素(CO2)換算で年間1,240万トンの温室効果ガスを排出しており、これはオーストリア全体の15.5%を占め、同国最大の温室効果ガス排出者と報じられている(「デア・スタンダード」紙3月22日)。EU排出量取引制度(EU ETS)において国から無償で割り当てられている排出枠が2026年から段階的に縮小し、2034年から廃止されるため、同社はすでに製鋼の製造工程の脱炭素化の準備に取り組んでいる。同社の監査役会は1年前に環境に優しい製鋼工程に向けた準備作業の開始を承認しており、今回の投資の承認は次なる一歩だ。

オーストリアの北部リンツと中部ドナウィッツにある同社の製鋼所でそれぞれ、溶鉱炉1基が電気アーク炉と交換されることにより、二酸化炭素の排出量が大幅に削減される予定だ。2027年のアーク炉2基の稼働に向けて、2023年中にシステムや供給業者の決定が行われ、2024年に建設が開始される計画だ。アーク炉では、鉄スクラップと溶銑、HBI(ホットブリケットアイアン)を用いて粗鋼を製造する。2027年からフェストアルピーネは年間250万トンのグリーン鉄鋼(注)を生産し、これにより二酸化炭素の排出量を30%で削減できるとしている。2030年には両製鋼所でそれぞれもう1基アーク炉が設置され、2050年までのカーボンニュートラル(炭素中立)を目指す。

監査役会のウォルフガング・エーデル委員長は「監査役会は執行役会が提案した脱炭素化計画を徹底的に確認し、満場一致で承認した。この投資によって、リンツとドナウィッツの製鋼所の長期的な存続と、ひいては当社の将来を確保できる」と述べた。

ヘルベルト・アイベンシュタイナー社長は「われわれのクリーンテックスチール計画はオーストリア最大の気候保護対策であり、これによりオーストリアの年間二酸化炭素排出量を5%削減できる」と述べた。また、同氏は記者会見において、政府の補助金への期待を述べた(「デア・スタンダード」紙3月22日)。オーストリア政府は製造業の脱炭素化のため、2030年まで57億ユーロを用意している。詳細はまだ発表されていないが、アイベンシュタイナー社長は、数千万ユーロの補助金を同社が受けることを期待していると述べた。

(注)生産過程で二酸化炭素(CO2)をほとんど排出しない鉄鋼。

(エッカート・デアシュミット)

(オーストリア)

ビジネス短信 4da344c7f80663ac