米政府、有志国と「輸出管理と人権イニシアチブ」の行動規範を公表

(米国、コスタリカ、オランダ、韓国、ザンビア、オーストラリア、デンマーク、ノルウェー、日本)

ニューヨーク発

2023年03月31日

米国国務省は3月30日、2021年12月に立ち上げた「輸出管理と人権イニシアチブ(ECHRI)」に関する行動規範を有志国とともに策定したと公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

ECHRIは、ジョー・バイデン大統領が2021年12月に主催した第1回民主主義サミットで提案した枠組みで、軍事用としても非軍事用としても利用可能なデュアルユース製品が人権侵害に用いられないよう有志国で協力することを目的としている(2021年12月14日記事参照)。今回の行動規範は、米国主導の下、2023年3月29日から30日にかけてコスタリカ、オランダ、韓国、ザンビアとの共催で開催された第2回民主主義サミットにおいて、その策定が公表された。立ち上げ時は米国、オーストラリア、デンマーク、ノルウェーの4カ国による枠組みだったが、今回策定した行動規範には、日本を含めて24カ国(注1)が参加した。なお、第2回民主主義サミットでは、民主主義を強化するために米国が向こう2年間で6億9,000万ドルを拠出することや、第3回民主主義サミットは韓国が主催することが明らかにされている。

行動規範では、(1)デュアルユース製品・技術が人権侵害に用いる可能性のあるエンドユーザーに渡らないよう国内外の法律、多国間枠組みが適切に更新されていることを確かにする、(2)産官学や一般市民と効果的な輸出管理法令の執行について協議を行う、(3)技術が進歩する中でそれらがもたらす脅威やリスクに関する情報を継続的に有志国と共有する、(4)人権侵害を行うリスクのある国家・非国家の主体に対するデュアルユース製品・技術の輸出管理に関するベストプラクティスを共有・策定・実施する、(5)産業界と協議し、非国家主体が国連の「ビジネスと人権に関する指導原則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」や国内法に基づく人権デューディリジェンスを実施することを促進する、(6)行動規範に参加していない国々のキャパシティビルディングを行うとともに、参加もしくは規範に沿った行動を促す、の6点を掲げている。また今後、定期的な会合を開催し、情報共有のあり方や、事務局的機能を担当する国の指定などを行うとしている。次回の会合は2023年後半に予定しているとしている。

行動規範は、あくまで自主的で非拘束とされており、民主主義サミットの参加国であれば、どの国でも参加できるとしている。米国では、デュアルユース製品の輸出管理を扱う多国間枠組みであるワッセナー・アレンジメント(注2)が、加盟国であるロシアによるウクライナ侵攻以降、機能不全に陥りつつあるとして、商務省を中心に新たな多国間の輸出管理体制を模索する動きがある(2022年9月16日付地域・分析レポート参照)。ECHRIがそれに当たるかの言及はないが、新たな動きとして今後の動きが注目される。

(注1)米国、日本、アルバニア、オーストラリア、ブルガリア、カナダ、クロアチア、チェコ、デンマーク、エクアドル、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、コソボ、ラトビア、オランダ、ニュージーランド、北マケドニア、ノルウェー、韓国、スロバキア、スペイン、英国。

(注2)42カ国からなる輸出管理体制で、通常兵器および機微な関連汎用品・技術の移転に関する透明性の増大および、より責任ある管理を目的としている。重要事項の決定は全会一致が原則となっているため、1カ国でも反対すれば採択されないことになる。詳細は外務省の解説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(磯部真一)

(米国、コスタリカ、オランダ、韓国、ザンビア、オーストラリア、デンマーク、ノルウェー、日本)

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