一般消費財から投資まで多岐にわたってイランとの結びつきが強まる

(ロシア、イラン)

欧州ロシアCIS課

2023年03月29日

西側諸国とのつながりが希薄になる中、ロシアが関係を強化している国の1つがイランだ。2国間の関係は観光、投資・貿易、消費市場などさまざまな分野で進展をみせている。

観光分野については、317日にモスクワ国際観光展「MITT」の枠内で開催された「国家間対話 ロシアとイラン」の中で、ロシアの経済発展省は、2023年中にイランとの間でビザなしのグループ旅行を実現させる意向を明らかにした。同省のマクシム・レシェトニコフ大臣は対話の場で、2国間の旅行客数が新型コロナ禍前の水準にすでに戻っていることに触れつつ、「観光は両国関係の新たな成長点となる」と述べ、人々の往来の一層の拡大に期待を示した(経済発展省発表317日)。現在、モスクワ~テヘラン間は両国の複数の航空会社が直行便を運航している。

投資・貿易の分野でも、ロシアとイランの結びつきは強まっている。イランの20233月までの会計年度の対内投資をみると、ロシアが最大の投資国となった(「イズベスチヤ」323日)。以前より盛んだった原子力発電などのエネルギー分野への投資に加え、金融インフラなどでも協力が進んでいる。貿易面では、ウクライナ侵攻により西側諸国からの経済制裁を受けるロシアにとって、イランは工業製品の輸入先の1つとして重要度が高まっている。イランからロシアへの輸出品は伝統的に農産物が多いが、自動車部品や金属加工機械などの輸出が増加している。

消費市場に「メードインイラン」が登場

ロシアの消費市場でも変化がみられる。イランの大手食品メーカーのソリコ・グループは2022年秋、ワッフル菓子「ソルボン」などのブランドを擁してロシア市場に進出する計画を発表した(「RBK2022823日)。今ではソルボンのほか、別ブランドのソースや炭酸飲料など多岐にわたる同社の商品がロシア国内で販売されている。また、ファッション雑誌マリ・クレールのロシア語版は313日付で、ロシアですでに購入可能なイラン製の化粧品を特集し、「試す価値のあるイラン製の商品」として「Comeon」や「Deep Sense」などの洗顔料やメイク落としを紹介している。

写真 一般のスーパーマーケットにもイラン製の商品が並び始めた(ジェトロ撮影)

一般のスーパーマーケットにもイラン製の商品が並び始めた(ジェトロ撮影)

イラン製の消費財は、今後も順次ロシア市場に投入される見込みだ。226日付のイズベスチヤ紙によれば、約20ものイラン発アパレルブランドが2023年中にロシアに進出する可能性がある。また、イランの大手自動車メーカーのイラン・ホドロとサイパも、ロシア市場への参入を準備していると報じられる。ロシアの自動車市場調査会社アフトスタトのセルゲイ・ツェリコフ社長は「イラン車は、(国内生産がストップし)事実上消滅した現代自動車・ソラリスや起亜・リオ、シュコダ・ラピッドなどのコンパクトセダン車の市場の隙間を埋めることになるだろう」と語っている(「イズベスチヤ」210日)。

【欧州ロシアCIS課】

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