イタリアの電力・再エネ大手エネル、ウクライナに国産太陽光パネル寄贈へ

(イタリア、EU、ウクライナ)

ミラノ発

2023年03月16日

欧州委員会は33日、イタリアの電力・再エネ大手エネルが今夏、ウクライナに350ワット(W)の太陽光パネル5,700枚を寄贈すると発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同日、エネルのフランチェスコ・スタラーチェ最高経営責任者(CEO)兼ゼネラルマネジャー、ウクライナのヘルマン・ハルシチェンコ・エネルギー相、欧州委のカドリ・シムソン委員(エネルギー担当)がこのプロジェクト立ち上げを記念し、オンラインで会談を行った。

同プロジェクトは、22日に欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長がウクライナを訪問した際に発表した支援イニシアチブ。太陽光パネルはウクライナの学校や病院、消防署などの公共施設に納入される予定。

エネルが寄贈する太陽光パネルは、同社がシチリア州カターニアに拠点を置く生産拠点「3サン・ギガファクトリー」で生産される。フォン・デア・ライエン委員長は欧州産の太陽光パネルを寄贈できることに感謝を示し、他の欧州企業やEU加盟国がこの一歩に触発されるだろうと述べた。

生産能力増強し、欧州最大規模を目指す

3サン・ギガファクトリーは2010年に設立され、現在の年間200メガワット(MW)の生産能力を2024年までに15倍の年間3ギガワット(GW)に増強し、欧州最大の太陽光発電パネル生産拠点を目指している。この生産拡大プロジェクトは「タンゴ」(注1)と呼ばれ、エネルは総額で約6億ユーロの投資を計画している。同プロジェクトは、EUイノベーション基金の大規模プロジェクト第1弾として欧州委が採択した7件のうちの1つで、同基金から11,800万ユーロの資金提供を受けることになっている。さらに、イタリアの「再興・回復のための国家計画(PNRR)」からの資金と合わせて、最大18,800万ユーロが拠出される予定。

26日に3サン・ギガファクトリーを訪問外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしたイタリアのジルベルト・ピケット・フラティン環境・エネルギー安全保障相は、同プロジェクトによって太陽光パネルの中国への輸入依存から解放されるだけなく、品質向上やイノベーションももたらすと発言。イタリアは、アフリカから欧州への天然ガスの輸入拠点としても存在感を高めるなど、「エネルギーの交差点」を目指しており、3サン・ギガファクトリーもその重要拠点として大きな期待が高まっている。

3サン・ギガファクトリーのエリアーノ・ルッソ代表は223日付の「イル・ソーレ・24オーレ」紙のインタビューで「現在、中国などで生産されているパネルと比較して、3サン・ギガファクトリーのパネルは30%ほど効率が良い」と語った。変換効率(注2)を24.6%まで高めることが可能な上、製造時の温度を800度から200度に下げることで、パネルの寿命を競合他社の20年に比べて30年以上まで延ばすことができるという。

(注1TANGOiTaliAN Giga factOryの略。

(注2)太陽電池が光エネルギーを電気に変換する時の効率のこと。

(平川容子)

(イタリア、EU、ウクライナ)

ビジネス短信 14992411a1214aea