経済活動は増加も企業は年内の景気後退を懸念、米シカゴ連銀ベージュブック

(米国)

シカゴ発

2023年03月10日

米国連邦準備制度理事会(FRB)が3月8日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック、外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます注1)の中で、米国中西部の一部地域(注2)を管轄するシカゴ連銀は、2023年1月から2月初めにかけての同地域の経済活動について、全体的に控えめに増加した(increased modestly)と報告した。多くは2023年内の景気後退の可能性について懸念しているものの、関係者は今後数カ月の成長鈍化を予想していると報告した。

同地域の経済活動を分野ごとにみると、雇用は緩やかに(moderately)増加したが、関係者は今後12カ月にわたって増加ペースが鈍化するとみている。引き続き労働者を確保することが困難との報告があった一方で、新規雇用を行わなかったり、人員を削減したりする企業の方が多かった。

個人消費は報告期間中に控えめに増加した(increased modestly)。非自動車の小売売上は販促に助けられ、わずかに増加した。新車・中古車販売台数は横ばいで、低い在庫水準が引き続き高値を支えている。

企業支出はわずかに増加した(increased slightly)。企業の設備投資は、新しいソフトウエア購入や古い機器の買い替えが報告されており、全体的に安定している。製造業では、原材料調達の待ち時間が改善したものの、一方で、在庫はわずかに増加した。また、多くの企業が供給網の混乱がなくなったと報告した。

製造業の需要はわずかに増加した(increased slightly)。鉄鋼需要は増加し、他の製造業やエネルギー産業向けの販売が伸びているとの報告があった。自動車生産台数は増加したが、半導体や労働力の不足による制約が残っているとの報告があった。

2023年の同地区での農業所得について、関係者は、2022年より少ないものの、平均に近い収益を予測している。小麦の価格は、ウクライナの穀物輸送に対するロシアの検査時間が長くなったことと、ロシアとの輸送取引の継続が不透明になり、買い手が購買に消極的になったことが一因となって上昇した。トウモロコシと大豆の価格も、南米での収穫量の不確実性が拍車をかけ上昇した。

地域社会の状況について、地域開発団体と行政機関は、経済活動にほとんど変化はなかった(little change)と報告した。非営利団体は、新型コロナウイルスに関連した財政支援の終了に伴って、求職支援への需要が高まっていると報告した。

個々の調査対象項目ごとのポイントは添付資料表参照。

(注1)連邦公開市場委員会(FOMC)の開催に先立ち、年8回公表されており、銀行からの報告や、ビジネス関係者などの声を基にまとめたもの。

(注2)アイオワ、イリノイ北部、インディアナ北部、ウィスコンシン南部、ミシガン南部。

(星野香織)

(米国)

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