EUの2022年第4四半期の企業破産申請件数、2015年以降で最多

(EU)

ブリュッセル発

2023年02月21日

EU統計局(ユーロスタット)は2月17日、EU27カ国における2022年第4四半期(10~12月)の企業の破産申し立て件数が、統計を開始した2015年以降で最も多かったと発表した(ユーロスタットのプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。2022年は年間を通して増加の一途をたどっていたが、特に第4四半期は前期比26.8%増と大幅に増加した。

2022年第4四半期の産業部門別の破産申し立て件数増加率(対前期比)をみると、運輸・倉庫業(72.2%増)、宿泊・外食産業(39.4%増)、教育・健康・社会福祉事業(29.5%増)の順に高かった。また、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年第4四半期と比較すると、全産業(製造業、建設業、サービス業)では約1.2倍、特に宿泊・外食産業では約2倍の増加となっている。2019年第4四半期を下回ったのは、製造業(17.6%減)、建設業(9.2%減)、情報・通信産業(4.0%減)の3部門のみだった。

一方、2022年第4四半期の新たな法人登記件数は前期比0.2%減だった。新たな法人登記については、2015年以降、増加傾向にあったが、2020年上半期に新型コロナ感染拡大の影響で大きく落ち込んだ。その後、回復し、同年第3四半期(7~10月)以降は2019年以前の水準を上回り続けている。

エネルギー、生産コスト、人件費増の「三重苦」による倒産増を示唆

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は同日、企業の破産申し立てが加速度的に増加していることは警戒すべき事態で、中小企業を中心に企業を取り巻く環境の厳しさに深い憂慮を示した(ビジネスヨーロッパのプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同連盟は、新型コロナ危機対策としてEU加盟国政府が実施した企業支援の終了とともに、新型コロナ危機以前から既に財務面で厳しかった多くの企業が倒産し始めていると指摘しながらも、エネルギー価格や原材料・生産コストの高騰、さらに人件費の上昇という「トリプルショック」による倒産の増加に懸念を示した。

同連盟は、欧州は企業の倒産数の増加に対して「短期的に曖昧な対策」を取るのではなく、事業環境の早期改善につながり、投資に対するインセンティブを創出する「実用的なプラン」が必要だと主張。今後数年間は企業にとって不安定な経営環境が続くとの見通しを示し、企業のイノベーション力や競争力強化のために、EUに対して、規制緩和による企業負担の軽減や、全産業部門が融資を受けやすくすること、さらに、エネルギーコスト負担の軽減に向けた対策の3つを同時に実現することを求めた。

(滝澤祥子)

(EU)

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