ドイツ国内の自動車販売・修理業、2040年に雇用が5割近く減少の可能性も

(ドイツ)

ミュンヘン発

2023年02月15日

ドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州の電気自動車(EV)関連クラスターであるイー・モビール・ベーベー(e-mobil BW)は131日、デジタル化や電動化が、ドイツ国内の自動車販売・修理業の雇用にどのような影響を及ぼし得るかを予測した調査報告書を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

同報告書のタイトルは「2030年および2040年における自動車販売・修理業の雇用への影響PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」。同報告書はまず、2021年時点での自動車販売・修理業の雇用者数を検証した。ドイツ全体の雇用者数は435,000人で、内訳はマネージメント層が約9%(39,000人)、管理部門系が約11%(47,000人)、販売系の現場が約21%(91,000人)、修理・部品系の現場が約59%(258,000人)となった。

その上で、自動車販売・修理業の雇用は今後、(1)乗用車のデジタル化・自動化、(2)業務プロセスのデジタル化、(3)販売方法の変化、(4)販売する車両のパワートレインの変化、に影響を受け、減少する可能性があるとした。

1)では、2030年までに自動車の74%、2040年までに90%がデジタルでつながり、OTA(注1)、予知保全、遠隔診断などが可能になる。また、2030年までにレベル3までの自動運転が約65%の車両に導入され、事故の確率が低くなる。これらはいずれも、自動車修理工場でのメンテナンス・修理の需要を減少させる。(2)では、他産業と同様、業務プロセスのデジタル化により、事務作業が効率化すると同時に、顧客への直接対応などが不要となる。(3)では、オンライン販売などの普及を受けて、ディーラーを通じた販売自体が減少する。なお本調査は、自動車メーカーから顧客への直接のオンライン販売の割合が2030年までに30%になると予測する。(4)では、従業員の新技術理解が必要になるほか、内燃機関搭載車に比べてバッテリー式電気自動車(BEV)は修理・メンテナンスの必要が減るため、BEVの割合が高まるにつれ、修理市場が縮小していく。

これらを踏まえた上で本報告書は、構造転換の進展度合いとドイツ全体の自動車販売・修理業の雇用者数への影響について3つのシナリオを用意。構造転換の進展について最も緩やかに考えるシナリオに沿うと、2030年に395,000人(2021年比で9.2%減)、2040年に373,000人(14.3%減)に減少するとした。他方、構造転換の進展について最も急激に考えるシナリオに沿うと、2030年に292,000人(32.9%減)、2040年に229,000人(47.4%減)まで雇用が減少するとしている。

報告書やイー・モビール・ベーベーは、従業員のリスキリング(注2)を進めるとともに、顧客ニーズの見極めが必要とした。たとえば、デジタルを活用したコミュニケーションを通じ顧客ニーズを把握して、BEV販売のみならず、顧客が潜在ニーズを持つEV用充電器、家庭向け太陽光発電の提案などによるサービスの拡充や最適化を挙げた。

(注1Over the Airの略。無線通信を経由してデータを送受信し、車載ソフトウエアなどの更新を行うこと。

(注2)リスキリング(re-skilling)は、デジタル化などにより産業構造が変わる中で、職種転換も見据えて新たなスキルを習得すること。

(高塚一)

(ドイツ)

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