輸出禁止・制限技術リストの改定案、商務部が特定産業を狙ったとの見方を否定
(中国)
北京発
2023年02月16日
中国商務部は2月11日の記者会見で、「輸出禁止・制限技術リスト改定案意見募集稿」(注1)に太陽電池用シリコンウエハー関連技術が初めて掲載されたことに関する質問を受け、同リストは特定の産業を狙ったものではないと回答した。また、意見募集で同技術項目について意見が寄せられていると明らかにした上で、関連部門と検討して合理的な意見は取り入れるとした。
同リストは、中国からの輸出を禁止あるいは制限する技術を列挙したもので、輸出禁止技術の項目に掲載した技術は輸出できず、輸出制限技術として掲載した技術を輸出する場合は、商務主管部門に申請を行って技術輸出許可証を取得する必要がある(注2、注3)。
商務部と科学技術部は2022年12月30日、技術の輸出入管理を強化するため、「対外貿易法」と「技術輸出入管理条例」の関連規定に基づいて同リストの改定案を公表した。改定案では、リスト掲載技術のうち32項目を削除し、36項目を修正したほか、新たに7項目を追加し、計139項目(うち輸出禁止技術は24項目、輸出制限技術は115項目)となった。
改定案では、ヒト用の細胞クローン技術やゲノム編集技術などを輸出禁止技術として追加したほか、大型シリコンウエハーの製造技術、ブラックシリコンの製造技術、シリコンウエハーの材料である単結晶・多結晶インゴットの超高効率な製造技術などの太陽電地用シリコンウエハーに関する技術を輸出制限技術として追加した。
今回の改定案について、中国国内の企業からは、太陽電池関連の有力な中国メーカーは既に東南アジアを中心とする国外に生産拠点を置いているため、これらの企業に対する影響は限定的だが、これから国外での生産を計画している企業には影響があるだろうとの声が出ている(「21世紀経済報道」1月31日)。
中国非鉄金属工業協会シリコン分科会専門家委員会の呂錦標副主任は「大型シリコンウエハーの製造技術は市場で現在主流となっている技術で、他の2項目よりも現実的な意味合いが大きい」と指摘した。また、呂氏は、中国は太陽電池の製造で世界一の市場と技術コスト上の突出した優位性を有しており、同技術がリストに掲載されれば、一部の国が実施している太陽電池産業の国産化支援政策を一定程度抑制するだろうとの見方を示している(同上、注4)。
(注1)意見募集は2022年12月30日から2023年1月28日まで行われた。
(注2)「技術輸出入管理条例」によると、技術輸出入とは、中国境外から境内に対して、あるいは、中国境内から境外に対して、貿易や投資、経済技術協力の方法によって、技術移転を行う行為を指す。なお、同条例では、技術移転行為には、専利権や専利出願権の譲渡、専利実施の許諾、ノウハウの譲渡、技術サービス、その他の方法による技術移転が含まれると規定している。
(注3)輸出制限技術の輸出許可申請プロセスについては、ジェトロ調査レポート「輸出禁止・輸出制限技術目録(後編・実務上のポイント)(470KB)」を参照。
(注4)2021年の中国のシリコンウエハー生産量の世界シェアは97.3%に達しているとされている(「21世紀経済報道」1月31日)。
(小宮昇平)
(中国)
ビジネス短信 86874394e1d3c371