欧州委、2023年のEUとユーロ圏のGDP成長率予測を上方修正、景気後退局面からの脱出示唆

(EU、ユーロ圏)

ブリュッセル発

2023年02月15日

欧州委員会が2月13日、冬季経済予測外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(中間予測、注1)を発表した。EU27カ国の2023年の実質GDP成長率を0.8%と予測し、前回の秋季経済予測(2022年11月18日記事参照)の0.3%から0.5ポイント上方修正した(添付資料表1参照)。2024年の実質GDP成長率は1.6%とし、前回から据え置いた。ユーロ圏20カ国(注2)についても、2023年の実質GDP成長率は前回の0.3%から0.6ポイント上方修正して0.9%とし、2024年は前回と同様の1.5%とした。

欧州委は、EU経済は予測以上に健全な状態で2023年を迎え、景気後退局面を脱することができそうだとし、2022年の秋以降、多くの好材料があったと背景を説明した。欧州のガス価格は、例外的な穏やかな天候や、需要の抑制と供給源の多様化に助けられ、ロシアによるウクライナ侵攻前の水準を下回った。その結果、2022年第3四半期(7~9月)、第4四半期(10~12月)のGDP成長率は予想より穏やかな減速となり、景況感も改善した。2022年の経済成長率は、EUとユーロ圏でともに3.5%と推計し、米国や中国を上回る見込みだ。

今回の予測によると、2023年通年のEU加盟国のGDP成長率は、スウェーデン(マイナス0.8%)を除く全加盟国でプラス成長となる。ユーロ圏の主要国をみると、前回予測から、ドイツは0.8ポイント上方修正されマイナス成長を回避すると予測した。その他、イタリアは0.5ポイント、スペインは0.4ポイント、フランスは0.2ポイント、それぞれ上方修正された。

エネルギー価格の急速な下落を受けて、インフレ率〔消費者物価指数(CPI)上昇率〕のピークは過ぎ、今後はさらに低下していくとして、2023年のEUとユーロ圏のインフレ率は、前回予測ではそれぞれ7.0%と6.1%だったが、6.4%と5.6%に下方修正された(添付資料表2参照)。

ガス価格や中国経済の活性化など、成長に対するリスクはおおむね均衡

欧州委は、新型コロナウイルスやガス不足に起因するリスクは大きく軽減され、ロシア・ウクライナ間の戦争や地政学的な緊張に関連した不確実性は非常に高いままとしつつも、成長に対するリスクはおおむね均衡しているとした。

ガス価格の下落が消費者物価に強く反映され、消費の回復力が高まれば、内需は予測を上回る可能性があるものの、戦争や地政学的な緊張が続く中、ガス価格が再び高騰に転じるシナリオも否定できないとの慎重な見方を示した。その他の要因としては、中国との往来再開により、外需がより活性化する期待があるものの、その結果、世界的なインフレ圧を高める可能性があるとした。また、金利上昇は、特に高債務を抱える企業や変動金利の住宅ローンを抱える家計にとって困難な状況を招くリスクがある点を指摘した。

(注1)欧州委は、春と秋にGDPの各構成要素や失業率、財政収支のGDP比などを含む包括的な経済予測を発表し、夏と冬に実質GDP成長率と消費者物価指数上昇率に関する中間予測を発表する。

(注2)2023年1月からクロアチアがユーロを導入。今回の経済予測から、2022年以前を含めて、ユーロ圏20カ国のデータが発表されている。

(大中登紀子)

(EU、ユーロ圏)

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