英政府、核融合プログラム実行機関の設立を発表

(英国)

ロンドン発

2023年02月16日

英国政府は2月6日、英国の核融合プログラムを実行するための機関として、英国インダストリアル・フュージョン・ソリューションズ(UKIFS)の設立を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同機関は、球状トカマク型(注)エネルギー生産(STEP:The Spherical Tokamak for Energy Production)施設を2040年までにウェストバートンで建設する予定だ。

STEPにおける核融合は磁場閉じ込め式で、2種類の水素が極度の高温に加熱され、融合してヘリウムと大量のエネルギーが生成される。そのエネルギーを利用することにより、発電所と同じように電力を生成できるという。核融合エネルギーは、ほぼ無限大な低炭素のエネルギー源として、英国のネットゼロ目標や経済発展に貢献するとしている。

また、政府は2023年1月12日、英国原子力公社(UKAEA)とカナダのジェネラル・フュージョンによる、UKAEAのカルハム・キャンパスにおけるデモンストレーション施設の建設を発表した。両社が開発する核融合施設は2026年に試運転を開始し、2027年初頭にはフル稼働する予定としている。さらに、UKAEAと英国のスタートアップ、ファースト・ライト・フュージョンは2023年1月25日、カルハム・キャンパスにファースト・ライト・フュージョンの核融合設備を収容する専用施設の設計・施工契約を締結した。

さらに、UKAEAの一部で、核融合の研究を進めているカルハム核融合エネルギーセンター(CCFE)は、世界最大級のトカマク型実験施設である欧州トーラス共同研究施設(JET)を運営している。CCFEは、欧州の30の核融合研究団体や大学が加盟しているユーロフュージョン・コンソーシアムの一員で、ユーロフュージョンが実行している共同研究プログラムに加わっている。

ファースト・ライト・フュージョンのルーク・トンプソン氏はジェトロに対し、「英国は長い間、核融合を牽引してきた。その戦略を支えているのは、独自の研究施設、革新的な研究開発(R&D)プログラムや優れた人材だ。総合的なアプローチで核融合分野を支援している英国政府が、今後、政府系組織だけではなく、民間系スタートアップなどへの投資を行うことにより、技術を進化させることが重要だ。クリーンエネルギー需要の高まりに対し、世界中の政府機関が核融合の加速化に向けて、公的資金をどのように使うのが最適かを考えるべきだ」と語った。

(注)トカマクとは、環状の電流を有する磁場を閉じ込める方式の1つ。プラズマを閉じ込め、核融合プラズマを生成する。

(レイナー・あや)

(英国)

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