ブラジルとウルグアイ、メルコスール中国FTAを見据えた作業部会設置を発表

(ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、メルコスール、中国)

米州課

2023年01月27日

ウルグアイのラカジェ・ポウ大統領は1月25日、ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領と大統領官邸で会談を行い、2国間の貿易やメルコスールの改革などについて協議した。

同日付のウルグアイ大統領府のリリースによると、ポウ大統領は、ウルグアイが世界に開かれることの必要性を述べ、それがメルコスール全体に波及することの重要性を強調した。この文脈でポウ大統領は、ウルグアイは「交渉を進めており」(注1)、その交渉内容を他のメルコスール加盟国に「通知することを妨げるものではない」と述べた。ポウ大統領はまた、両国の代表者によって構成する作業部会を設置し、メルコスール加盟国のアルゼンチンやパラグアイの専門家も招待しながら、「中国との関係で本当に必要なものが何か」を協議するとしている。

1月25日付のアルゼンチン現地紙「TN」によると、設置が予定されている作業部会では、メルコスール中国自由貿易協定(FTA)について協議する。また、ルーラ大統領は対中FTAの前に、2019年に政治合意して以降、現時点でまだ署名に至っていないメルコスールEU・FTAに優先的に取り組む意向を示した。ルーラ大統領はまた、メルコスールの改革について議論すべきというウルグアイの考えにも同意すると述べた(1月25日付ブラジル現地紙「G1」)。

対中FTAについては、ウルグアイが2022年7月、中国との2国間FTAに関する予備調査を完了している。その結果は今後の交渉に影響を及ぼすとして非公開だが、ウルグアイ大統領府は「2国間FTAは双方にとって有益なことが確認できた」と述べ、近く交渉開始すると発表していた。

ただ、関税同盟であるメルコスールの加盟国がこのように単独で第三国と交渉を行うことは、メルコスールの規定に関する解釈が分かれており、加盟国間でも意見が割れていた(注2)。ブラジルのマウロ・ビエイラ外相は、ウルグアイ中国FTAはメルコスールが目指す統合というポリシーに反し、対外共通関税率を無視するもので、メルコスールを危険にさらすと述べている。しかし、メルコスールが設立された1991年から30年以上を経た今、加盟各国の要望を踏まえ、何らかの譲歩ができるか確認する必要があるとも述べている(1月24日付現地紙「メルコプレス」)。

(注1)ウルグアイ大統領府のプレスリリースでは、交渉相手を中国とは明言していないものの、中国を示唆していると思われる。

(注2)2000年に規定したメルコスール共同市場審議会(CMC)決議32/00では、「域外の第三国・地域との『関税譲許を目的とした通商協定の交渉』は全加盟国で行う」と定めているが、加盟各国で批准手続きが行われていないため発効していない。ウルグアイ政府は、発効していないため個別の通商交渉は可能だと主張している。

(辻本希世)

(ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、メルコスール、中国)

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